海外出店|業態・商品設計

海外で定食店を開く:やよい軒の事例に学ぶセット商品の原価・提供・カロリー表示

やよい軒インドネシア1号店の公表内容(77席、定食18種、中央値約1,060円)を手がかりに、ご飯・汁・小鉢など共通部品で積み上がる定食の原価計算、トレーを同時にそろえる厨房工程、米国外食CPI3.4%上昇下の価格改定、米国・NYC・イングランドのカロリー表示の対象条件を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. やよい軒の海外展開から分かる、定食業態の組み立て方
  2. セット商品の原価は「部品」ごとに管理する
  3. 提供の流れ:主菜・ご飯・汁・小鉢を同時にそろえる
  4. 価格の決め方:現地の外食価格の動きと、客単価の幅
  5. カロリー表示:米国・ニューヨーク市・イングランドの対象条件
  6. 開業前に決めておく項目

定食は、主菜にご飯、味噌汁、小鉢、漬物を組み合わせた「セット商品」です。日本では当たり前の形ですが、海外では1枚のトレーに何品も載ることが価値として受け取られる一方、店にとっては1つの注文で4〜5品を同時にそろえる必要があり、原価も部品ごとに積み上がります。この記事では、プレナス(やよい軒)の海外展開に関する公表資料、米国労働統計局の消費者物価、米国・ニューヨーク市・イングランドのカロリー表示規則をもとに、セット商品の提供と原価を整える方法を整理します。

1. やよい軒の海外展開から分かる、定食業態の組み立て方

プレナスの2025年5月8日のプレスリリースによると、定食レストラン「やよい軒」は2006年のタイ初出店以来、2025年4月末時点で海外8か国・地域に約250店(リリース内に249店と247店の2つの記載があります)を展開し、海外比率は4割を超えています。8か国目となったインドネシアの1号店について、リリースは次の点を公表しています。

項目インドネシア1号店(ジャカルタ)の内容
立地ショッピングモール、オフィス、住宅、ホテルを備えた複合施設内
席数・営業時間77席、午前10時〜午後10時
開業時のメニュー定食18種、重(丼)7種、うどん2種、ドリンク各種。今後拡大予定
価格帯日本円換算で600〜1,600円、中央値は1,060円程度(例:すき焼き定食145,000ルピア=約1,420円)
注文方法テーブルに置いたタブレットで注文。キャッシュレスやセルフ等のサービスは行わない
実績フィリピンやマレーシアの平均売上を上回るなど順調。5年で10店を目指す

リリースは、インドネシアを選んだ理由として、人口約2.8億人(2023年時点)で平均年齢が約30歳と若いこと、ショッピングモールを日常的な食事の場として使う人が多いこと、インドネシア料理は煮物や揚げ物が多く味付けが比較的マイルドで日本食との共通点が多いことを挙げています。定食業態の出店先を選ぶときは、「日本食が好きか」よりも、「日常の食事を外で、どこで、いくらで食べているか」と「現地の家庭料理と定食の味付けがどれだけ近いか」を見ている、ということです。

ここから読み取れるのは、定食業態の海外展開が「日本と同じ品数を最初から出す」のではなく、開業時の品数を絞り、価格帯を現地のモールの客が日常的に使える範囲に収め、注文をタブレットで受けて厨房への伝達を単純にしている、という組み立てです。品数の決め方は開業メニューの品数を絞る判断基準で詳しく扱います。

2. セット商品の原価は「部品」ごとに管理する

定食の原価は、主菜だけで計算すると必ず合わなくなります。ご飯、味噌汁、小鉢、漬物、ドレッシングやたれといった「全セット共通の部品」が、すべての注文に乗るからです。以下は仮定の数字による計算例です。

部品1食あたり原価(仮定)管理のポイント
主菜(例:鶏の照り焼き)3.20ドル主菜ごとに歩留まりを測る
ご飯(おかわりの平均を含む)0.60ドルおかわり自由にするなら平均量を実測
味噌汁0.35ドルだしの取り方で原価が大きく変わる
小鉢・漬物0.55ドル日本からの輸入品は為替の影響を受ける
合計4.70ドル販売価格15ドルなら原価率は約31%

ご飯のおかわりを無料にするかどうかは、原価だけでなく炊飯量の読みにも影響します。日本では定番のサービスでも、海外では1回目の盛りの量そのものが客層によって大きく違います。試験営業の期間に、1食あたりの実際の米の使用量(炊く前の重量)を1週間ほど記録し、その平均で原価を置き直すと、計画と実績のずれが小さくなります。

この例では、共通部品の合計が1.50ドルで、原価の3割を占めます。主菜を安い食材に変えても共通部品は減らないため、低価格の定食ほど原価率が高くなりやすい構造です。共通部品のうち、米の調達と品質の管理は米の調達の記事、だしと調味料はたれとだしの記事で扱っています。

要点:定食のメニュー表は、主菜ごとに「主菜原価+共通部品原価」で原価率を並べて作ります。共通部品の原価が上がったときに、全メニューの原価率が同時に上がることを、事前に見えるようにしておくためです。

3. 提供の流れ:主菜・ご飯・汁・小鉢を同時にそろえる

定食は、トレーに載る品が1つでも欠けると提供できません。厨房の流れは、主菜を焼く・揚げる工程と、ご飯・汁・小鉢を盛る工程を分け、最後にトレーで合流させる形が基本になります。

  1. 主菜の工程:焼き台、フライヤー、コンロの担当。主菜ごとの調理時間を測り、長いものから順に着手する。
  2. 盛り付けの工程:ご飯、味噌汁、小鉢、漬物をトレーに準備する担当。主菜の完成時刻に合わせて、汁を最後によそう。
  3. 合流と確認:トレーの品がそろっているか、注文の変更(ご飯の量、アレルギー対応)が反映されているかを確認して出す。

仮に昼のピークに15分で30食の注文が入るとすると、盛り付けの工程は30秒に1トレーのペースが必要です。小鉢を事前に器に盛って冷蔵しておくか、注文ごとに盛るかで、このペースに間に合うかどうかが決まります。事前に盛っておく小鉢は、要冷蔵のまま保管し、保管期限を決めて表示する運用が必要です(温度の記録は温度記録の記事を参照してください)。

注文の受け方も、この流れに影響します。やよい軒のインドネシア店はテーブルのタブレットで注文を受けており、一風堂を運営する力の源ホールディングスも国内店でタブレット・モバイルオーダーの導入を進めていると開示しています。ご飯の量の変更や、小鉢の差し替えといった定食特有の細かな指定は、口頭で受けると厨房への伝達で抜けやすい部分です。タブレットやPOSに選択肢として組み込めば、盛り付けの工程で見落としにくくなります(→POSの設定)。

4. 価格の決め方:現地の外食価格の動きと、客単価の幅

定食は日常食として使われる業態なので、価格は現地の外食価格の相場から大きく外れられません。米国労働統計局(BLS)の消費者物価指数(2026年9月11日公表)によると、2026年8月までの12か月で外食(food away from home)の指数は3.4%上昇し、そのうちフルサービスの食事が3.5%、リミテッドサービス(カウンター注文型など)の食事が3.2%上昇しました。仮に15ドルの定食を1年据え置くと、相場が3.4%上がった分だけ相対的に約0.5ドル安くなった計算です。食材費と人件費が毎年上がる環境では、開業時の価格を据え置いたままでは原価率と人件費率が年々悪化します。

やよい軒のインドネシア店が公表している価格帯は600〜1,600円(中央値で約1,060円)で、最も安い品と最も高い品の差は約2.7倍です。定番の価格の幅をこの程度に収めておくと、日常使いの客が「いつもの一食」として選びやすくなります。価格改定のときは、共通部品の原価上昇分を全メニューに一律で乗せるのか、主菜ごとに見直すのかを決めておくと、改定のたびに議論をやり直さずに済みます。

5. カロリー表示:米国・ニューヨーク市・イングランドの対象条件

定食はセット商品であるため、カロリー表示の対象になると、セットの組み合わせごとに計算する必要があります。1店目で対象になることは少ないものの、多店舗化を考えるなら、どの時点で対象になるかを知っておくべきです。

地域対象主な要件
米国(FDA)同じ名称で実質的に同じメニューを出す20店以上のチェーン(フランチャイズを含む)。2018年5月7日から適用メニューに標準品目のカロリーを表示し、「1日2,000カロリーが一般的な栄養指導に使われるが、必要量は人により異なる」旨の文を表示。脂質・ナトリウムなどの栄養情報は求めに応じて書面で提供
ニューヨーク市全米で15店以上のチェーン(任意でFDAに登録した店を含む)市保健法81.50条によるカロリー表示。セット(combination meal)の定義を置いている
イングランド従業員250人以上の事業者(パートタイムを含めて数える。フランチャイズ店はフランチャイザーの一部として数える)。2022年4月6日施行kcal表示、分量の明示、「成人は1日約2,000kcalが必要」の文を、客が選ぶ場所に表示

米国の規則では、1暦年のうち合計60日未満しかメニューに載らない品(temporary menu item)や日替わりの特別品(daily special)は表示の対象外です。イングランドでも、連続30日未満かつ年間合計30日以内しかメニューに載らない品は対象外とされています。季節の定食を短期間の限定品として回す設計にすれば、通年の定番品だけを計算の対象にできます。ただし、アレルゲン情報は限定品にも必要です(アレルゲン表の作り方)。

6. 開業前に決めておく項目

項目決めること
開業時の品数定番の主菜の数、丼・麺の数。どこまでを開業後に追加するか
共通部品ご飯の量とおかわりの扱い、味噌汁・小鉢・漬物の内容と原価
原価表主菜ごとに「主菜原価+共通部品原価」で原価率を並べる
厨房の工程主菜の工程と盛り付けの工程の分担、ピーク時の1トレーあたりの秒数
注文方法口頭、紙、タブレットのどれで受けるか。変更(量、アレルギー)の伝え方
価格改定の方針共通部品の値上がりをどう反映するか、改定の頻度
表示規則多店舗化した場合にカロリー表示の対象になる時点

定食の強みは、1つの注文で栄養の偏りの少ない食事が完結することで、それが海外の客にも分かりやすい価値になります。その価値を利益に変えるには、共通部品の原価と、トレーを同時にそろえる厨房の流れを、開業前に数字で確かめておくことが欠かせません。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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