アジア・オセアニア

シンガポールの厨房人員:WP・Sパス・EPの使い分け

シンガポールの飲食店の厨房で、ワークパーミット、Sパス、エンプロイメントパスをどう組み合わせるか。対象国籍、日本人がWPを持てない理由、コック向けのNTSリスト、枠とレビー、計算例を解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 3種類のパスと厨房の3つの層
  2. ワークパーミット:飲食店で保持できるのは誰か
  3. NTSリスト:南アジア・東南アジアからの調理スタッフ
  4. Sパス:厨房の中堅層
  5. エンプロイメントパス:日本人料理長
  6. ローカル従業員が枠を決める
  7. 計算例
  8. 人員構成の組み立て方

シンガポールの日本食レストランが、厨房を1種類のパスだけでまかなうことはまずありません。日本人の料理長はエンプロイメントパス(EP)、副料理長はSパス、ラインのコックやキッチンアシスタント、洗い場はワークパーミット(WP)保持者かローカル人材、という構成がよくあります。パスごとに国籍、枠(クォータ)、雇用税(レビー)のルールが異なり、そもそも何人の外国人を雇えるかはローカル従業員の人数で決まります。本記事では、2026年9月時点の人材開発省(MOM)のページをもとに、3つのパスが厨房の中でどう組み合わさるかを解説します。日本人料理人そのものについてはシンガポールで日本人料理人を雇うをご覧ください。

1. 3種類のパスと厨房の3つの層

ワークパーミット(サービス業)Sパスエンプロイメントパス
厨房での典型的な役割コック、キッチンアシスタント、洗い場、ホールシニアコック、副料理長、セクションリーダー料理長、総料理長
日本国籍者は対象か対象外対象対象
最低給与原則なし。NTS職種は固定月給S$2,000S$3,300から(年齢で上昇)。2027年1月1日からS$3,600からS$5,600から(金融以外、年齢で上昇)。2027年1月1日からS$6,000から
WPとSパス合計で全従業員の35%まで全従業員の10%まで(35%の内数)枠なし。COMPASSのポイント審査
月額レビーS$300〜S$800(段階と技能区分による)S$650なし
FCFの求人広告不要必要必要

2. ワークパーミット:飲食店で保持できるのは誰か

MOMは、レストラン、コーヒーショップ、フードコートなど承認された飲食施設をサービス業として扱いますが、ホーカーや屋台は除外されます。WP保持者を雇えるのはシンガポール食品庁(SFA)の飲食店営業許可(フードショップライセンス)を持つ事業者だけで、許可証は個人名ではなく会社名義でなければなりません。

サービス業のWP保持者は、承認された出身国・地域の人に限られます。

日本はこのリストに入っていません。どれほど下位の職務であっても、日本人のコックをWPで雇うことはできません。日本人を厨房に入れるならSパスかEPです。WPの申請時の年齢は18〜62歳で、64歳まで働けます。

レビーは、上限にどれだけ近いかによって段階的に上がります。

全従業員に占めるWP保持者の割合ベーシックスキル(月額)ハイヤースキル(月額)
10%までS$450S$300
10%超〜25%S$600S$400
25%超〜35%S$800S$600

MOMは、2028年から最初の2段階を統合し、ハイヤースキルはS$400、ベーシックスキルはS$600にすると発表しています(実施時期は今後公表)。ハイヤースキルの料率を受けるには、認められた資格を持つか、市場ベースの基準(固定月給S$1,600以上、かつWPでシンガポールに4年以上勤務)を満たす必要があります。飲食業では、資格ルートで申請するマレーシア以外の労働者は、職場英語・算数能力評価(WPLN)のリスニングとスピーキングでレベル4に合格する必要もあります。

3. NTSリスト:南アジア・東南アジアからの調理スタッフ

非伝統的供給源(NTS)職種リストにより、サービス業の企業はバングラデシュ、ブータン、カンボジア、インド、ラオス、ミャンマー、フィリピン、スリランカ、タイからWP保持者を雇えます。ただしリスト掲載職種に限られます。飲食サービス従事者はリストに含まれ、コック、キッチンアシスタント、ウェイター、飲食スタンドの店員、精肉・鮮魚などの食品下処理担当が明記されています。条件は次のとおりです。

日本食レストランにとっては、和食の技術を仕込めるラインのコックやキッチンアシスタントを確保する現実的な供給源になることが多いルートです。社内での育成方法は日本人以外のスタッフに和食を教えるで解説しています。

4. Sパス:厨房の中堅層

Sパスは、EPの基準額には届かない熟練のコックや副料理長に向いており、日本国籍者も対象です。サービス業での制約は次のとおりです。

小規模な店では、この10%の上限が実際の制約になります。給与台帳上のローカル従業員が少なければ、Sパスの余地がまったくないこともあります。

5. エンプロイメントパス:日本人料理長

EPには枠もレビーもないため、日本人の上級料理人には魅力的な選択肢です。その代わりにCOMPASSのポイント制と基準給与があり、金融以外の業種ではS$5,600から始まり年齢とともに上がります(2027年1月1日からS$6,000から)。学位のない料理人は学歴の項目で0点になるため、ほかの項目の比重が大きくなります。採点の詳細は料理人のためのCOMPASSポイントで解説しています。

6. ローカル従業員が枠を決める

35%の上限もSパスの10%の上限も、全従業員数に対して計算されます。MOMはローカル従業員の数をCPF(中央積立基金)の記録から、直近3か月の平均で数えます。満額で数えられるのは、ローカル適格給与(LQS)以上を支払っているローカル従業員だけです。

LQSは最低給与でもあります。外国人を雇う企業は、プログレッシブ・ウェージ・モデルの対象外のローカル従業員に少なくともLQS(フルタイムはS$1,800、パートタイムは時給S$10.50)を支払わなければなりません。CPF拠出が遅れると枠が減り、外国人従業員がより高いレビー段階に振り分けられることがあります。

7. 計算例

以下は単純化した例です。実際の数字はWP OnlineにあるMOMの枠計算ツールで確認してください。

あるレストランには、フルタイムで月S$1,800を超える給与のローカル従業員が20人います。日本人料理長をEPで、残りの厨房スタッフをSパスとWPで雇いたいと考えています。

LQS以上でローカルを1人採用するごとに、枠が広がります。成長中の飲食グループにとって、ローカル採用は政策上の要請であるだけでなく、外国人採用を可能にする前提条件です。

レビーは一時費用ではなく毎月のコストとして予算化してください。この例では、Sパス3人分のレビーだけで月S$1,950かかり、WPのレビーは上限に近づくほど上がります。

8. 人員構成の組み立て方

  1. 直近3か月でLQS以上を支払っているローカル従業員の数を確認する。すべてはこの数字で決まります。
  2. 給与とCOMPASSの点数が満たせるなら、日本人料理長はEPにする。枠を使いません。
  3. 特定の人材が必要な熟練職(2人目の日本人コックなど)にSパスの枠を使う。
  4. ラインのコック、キッチンアシスタント、洗い場は、マレーシア、中国、北アジア、NTS諸国(8%以内)の人材またはローカルで埋める。洗い場・キッチンポーターの採用を参照。
  5. 人員の増減に合わせて、四半期ごとにレビーの段階を見直す。

本記事は、2026年9月にシンガポール人材開発省のページで確認した一般的な情報であり、法律や移民手続きに関する助言ではありません。枠、レビー、給与基準は変わることがあり、MOM自身の枠計算は上記の単純化した例と異なる場合があります。実際の手続きの前にMOMに確認してください。

出典

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