採用の進め方

飲食店のリファラル採用ボーナス制度:文書テンプレと金額

海外の和食店向けに、そのまま使える1枚の制度文書、ボーナス金額の決め方、給与計算上の税務上の扱い、日本国内の紹介者に謝礼を払う際の職業安定法の注意点、公平性の保ち方を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

社員紹介制度は、日本人料理人が持つ人脈を採用チャネルに変える仕組みです。ルールを1枚の紙にまとめ、ボーナスは現金の手渡しではなく給与計算を通して支払い、入社時と試用期間終了後に分けて支払います。金額は、噂の相場ではなく、他のチャネルで実際にかかる採用コストと比べて決めてください。紹介ボーナスの相場を示す公的なデータは見つかっていません。紹介と同時に、その職種の公募も必ず行い、紹介が公募の代わりにならないようにします。

このページは、すでに料理長の人脈を通じて採用してきたオーナーが、それを制度として整えたい場合向けです。対象者、ボーナスが確定する時点、支払い方、日本国内の紹介者に謝礼を払う際の法律上の注意点、公平性の保ち方を扱います。他のチャネルの費用と比較する材料は人材紹介会社と求人サイトの比較に、求人票そのものの書き方は日本の料理人向け求人票の書き方にあります。

目次

  1. 和食の厨房で紹介採用が効く理由
  2. そのまま使える制度の1枚文書
  3. ボーナスの金額を決める
  4. 紹介ボーナスの支払い方と税金
  5. 日本からの紹介:法律上の注意点
  6. 紹介採用の公平性を保つ
  7. 紹介がうまくいかなかったとき
  8. 日々の運用

1. 和食の厨房で紹介採用が効く理由

海外で働く日本人の料理長に、前回の寿司職人をどうやって見つけたか聞いてみると、「人づてで」という答えが返ってくることが少なくありません。以前の同僚、調理師学校の先輩、海外で働きたがっていた知人の知人。社員紹介制度は、こうした非公式なつながりを、計画に組み込める仕組みに変えるものです。

紹介された応募者は、より正確な情報を持って来ます。実際の勤務時間、料理長の人柄、その都市での生活費を友人から聞いているためで、これは料理人が早期に辞める理由としてよく挙がる「聞いていた話と違う」というずれを小さくします(日本人料理人の定着参照)。一方で限界も現実にあります。紹介で届くのはスタッフの知り合いだけで、派閥が生まれることもあり、紹介した人が合わなかった場合は従業員同士の関係にひびが入りかねません。こうしたリスクを踏まえて制度を設計してください。

2. そのまま使える制度の1枚文書

[ ]を埋め、自店のスタッフ向けに日本語欄をそのまま使い、全従業員に配ってください。

【店名】社員紹介制度
紹介できる人:在籍中の全従業員。ただし[その職種の採用責任者]と[オーナー・役員]を除く。
対象職種:[寿司職人、料理長、酒ソムリエなど。四半期ごとに見直し]。
紹介の条件:応募者がまだ選考に入っておらず、応募前に[このフォーム/このメールアドレス]から、紹介者の氏名を添えて紹介されていること。
ボーナス:[金額または金銭以外の対価]。入社時に[金額1]、試用期間終了後に[金額2]を支払う。
紹介者が先に退職した場合:[すでに発生した分は支払う/退職日以降に発生する分は支払わない、いずれかを選択]。
支払い方法:給与計算を通じ、課税対象の給与として、各節目の後の給与支払日に支払う。
すべての募集職種は引き続き公募する。紹介は応募者を増やすものであり、公募の代わりではない。

[Restaurant name] Employee Referral Programme
Who can refer: any current employee, except [the hiring manager for the open role] and [owners/directors].
Roles that qualify: [sushi chef, head chef, sake sommelier — list updated each quarter].
What counts as a referral: the candidate is not already in our hiring process, and is submitted before they apply, through [this form / this email address], with the referring employee's name.
Bonus: [amount or non-cash equivalent], paid [amount 1] when the referred hire starts, and [amount 2] after they complete probation.
If the referrer leaves first: [they still receive any payment already earned / payments after their last day are forfeited — choose one].
How we pay it: through payroll, as taxable pay, on the payroll date after each milestone.
We still advertise every open role. Referrals add candidates; they do not replace the ad.

3. ボーナスの金額を決める

紹介ボーナスの相場を示す公的なデータは見つかっておらず、ある市場での数字が別の市場でそのまま使えるわけでもありません。勘に頼らず、方法で決めましょう。有料チャネルで実際に1人採用するのにかかる費用の一部を基準にすれば、従業員にとって十分に魅力的でありながら、採用コストの中で最も安い支払いにはなりません。

基準にする数字1人あたりの目安コストその15〜25%を紹介ボーナスに
日本での中途採用、人材紹介会社経由(厚生労働省 令和6年度データ:常用の紹介1件あたり平均約103万円、上限は6か月の賃金の10.8%)約103万円15万〜26万円
現地採用の寿司職人、求人サイト掲載+管理職の対応時間人材紹介会社と求人サイトの比較で算出した自店の数字同じ考え方で計算
キッチンハンドやラインコック、口コミですぐ埋まる職種低め。少額の定額か金銭以外の対価で十分なことが多い日給1日分や食事の招待が実務上よく使われる

現金と同じくらい、追加の休日、食事券、帰国費用の補助といった金銭以外の対価を喜ぶスタッフもいます。可能な範囲で選べるようにしてください。

4. 紹介ボーナスの支払い方と税金

紹介ボーナスは、他の給与と同じく給与計算を通して支払ってください。ほとんどの国で課税対象の給与所得にあたり、給与計算の外で現金払いにすると、双方に税務や記録上の問題が生じます。自国のルールは会計士に確認してください。

米国では、内国歳入庁(IRS)がボーナスを「補足賃金(supplemental wages)」として扱います。IRSの雇用主向け税務ガイド(Publication 15、2026年版)は、補足賃金にはボーナス、歩合、報奨が含まれるとし、補足賃金に対する任意の定率源泉徴収率は引き続き22%(暦年で100万ドルを超える補足賃金には37%)としています。ボーナスを通常の給与に合算し、合計額に対して源泉徴収する方法も選べます。

支払日の前に額面の金額を伝え、控除について説明してください。新しい人が入社したその日に、支払日を給与カレンダーに入れておきます。約束したボーナスが思ったより少なく振り込まれると、せっかくの好意が逆効果になります。

5. 日本からの紹介:法律上の注意点

海外の和食店にとって最も良い紹介は、日本にいる人から来ることが多いものです。料理人の元同僚、調理師学校の先生、取引先などです。こうした人に謝礼を払う場合は注意が必要です。

日本の職業安定法は国内での労働者の募集を規制しています。第40条は、労働者の募集を行う者は、募集に従事する自社の被用者や募集受託者に対して、賃金・給料その他これらに準ずるものを支払う場合や第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならないと定めています。また第30条は、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めています。

これらの規定が、海外の雇用主が日本にいる人に謝礼を払う場合にどう適用されるかは日本の弁護士に確認すべき問題であり、本記事では判断しません。リスクの低い設計はシンプルです。

6. 紹介採用の公平性を保つ

紹介採用では、今いるスタッフに似た人が集まりがちで、それが知らないうちに他の人を締め出すことがあります。米国雇用機会均等委員会(EEOC)は、従業員の大半がヒスパニック系の雇用主が口コミによる募集に頼った結果、新規採用者のほぼ全員がヒスパニック系になった場合、法律違反となりうるという例を挙げています。同じ考え方はどの集団にも当てはまり、ほぼ日本人だけで構成された厨房も例外ではありません。

7. 紹介がうまくいかなかったとき

8. 日々の運用

紹介制度は立ち上げの費用がほとんどかからず、最も良い人材につながることもあります。ルールを文書にし、公平に運用し、給与計算を通して支払うこと。そして公募の代わりではなく、公募と並行して使うことです。

変わりうる点:米国の補足賃金の源泉徴収率、日本の職業安定法の運用指針。IRS Publication 15は毎年1月に改訂されるため、そのタイミングで再確認します。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

紹介ボーナスはいくらにすればよいですか。

公的な相場はありません。人材紹介会社や求人サイトなど有料チャネルで実際に1人採用するコストの15〜25%程度を目安にすると、スタッフにとって意味のある金額になりつつ、採用手段の中で最も安上がりな支払いにはなりません。

日本にいる元同僚に、候補者を紹介してくれた謝礼を払ってもよいですか。

紹介ボーナスは、自社の従業員にだけ給与計算を通して支払うべきです。日本の職業安定法は、募集に関わる自社の被用者以外への報酬を制限しており、無許可で有償の紹介業を行うことも別途規制されています。自社の従業員ではない日本国内の人に謝礼を払う前に、日本の弁護士に相談してください。

紹介ボーナスは給与計算の外で現金払いしてもよいですか。

おすすめしません。ほとんどの国で課税対象の給与所得にあたり、給与計算の外で現金払いにすると双方に税務や記録上の問題が生じます。通常の給与サイクルの中で支払ってください。

紹介採用は差別の問題につながりますか。

紹介だけが採用チャネルになり、スタッフの構成に偏りがある場合はつながりえます。紹介を受け付けている間も必ず公募を続け、全応募者に同じ面接と実技試験を課し、年に1回、実際にどこから採用しているかを確認してください。

ボーナスが全額支払われる前に紹介者が退職したらどうなりますか。

制度を始める前に、書面でどちらかに決めておいてください。退職日までに確定した分だけ支払う雇用主もいれば、未払い分は一切支払わない雇用主もいます。どちらを選ぶかを1枚文書に明記し、後で驚かれないようにします。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務上の助言ではありません。ボーナスの税務上の扱いや、募集に対する報酬のルールは国によって異なります。制度を始める前に現地の専門家にご相談ください。

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