採用の進め方

日本人料理人の定着対策:辞める理由と最初の90日

海外に呼んだ料理人が辞める理由、最初の90日のスケジュール、日英の月1回面談の台本、2年目以降を左右するビザの節目、費用別の定着対策。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

海外に呼んだ料理人が給与だけを理由に辞めることは、あまりありません。辞めるきっかけは、仕事が聞いていた内容と違う、最初の1か月でつまずく、話し相手がいない、ビザの先行きが見えない、といったことです。まず今週、書面で約束した内容と実際の仕事の照合と、月1回15分の面談という費用のかからない2つから始めます。そのうえでビザの節目を料理人と共有し、各節目の前に提示する条件を用意します。

このページは、すでに日本から料理人を呼んだオーナーや店長が、その料理人に長く働いてもらうためのものです。辞める理由、最初の90日、月1回の面談、ビザの節目、何を変えるかという実務を扱います。離職率の統計と、1人辞めた場合のコストは飲食店の離職率を、日本企業向けに書いた段階別のチェックリストは海外の日本人料理人の定着を、着任時の手続きは日本から来る料理人の受け入れをご覧ください。

目次

  1. 海外に移った料理人が辞める理由
  2. 最初の90日
  3. 月1回の面談の台本
  4. 2年目、3年目を左右するのはビザの節目
  5. 費用別に見た、変えるべきこと
  6. 効果を確かめる
  7. よくある質問

海外に移った料理人が辞める理由

飲食サービス業の離職率は、米国、シンガポール、日本のいずれでも全産業のおよそ2倍です。数字は離職率のデータページにまとめています。海外で働く日本人料理人の退職理由を調べた調査は存在しないため、以下は頻度の順位ではありません。それぞれの理由が表に出てくる時期の順に並べており、これは手を打てる順番でもあります。

理由表に出る時期早めのサイン変えること
仕事が説明と違う(労働時間、休日、メニューの裁量、客数、料理のジャンル)2〜8週目返事が短い、「大丈夫です」、頼んでいないのに残る雇用条件の書面と実際のシフト・業務を照らし合わせ、ずれを直すか、率直に説明する
生活の立ち上げでつまずく(住居、銀行、携帯、納税者番号)1か月目休日が手続きで消える、働き始める前から疲れている1週目の手続きには、担当者を決めて必ず同行させる
孤立2〜6か月目休日の予定がない、職場以外の人の話が出ない日本語で話せる相手、日系の取引先や地域の日本人との紹介
食材と裁量2〜9か月目魚や米への不満、料理がいつのまにか簡略化されている何をだれが発注するかを決め、任せる料理か持ち場を1つ渡す
お金:給与明細の想定外、家賃、為替最初の給料日、その後は毎年控除についての質問、仕送りが減ったという話最初の給料日の前に給与明細を日本語で説明し、昇給の見直し日を決める
先が見えない:更新、永住、昇進10〜24か月目ビザについての質問、知人の別の店の話下のビザの節目の表を書面で共有する
日本にいる家族、同行した家族の事情いつでも時間外の日本への電話、働けない配偶者一時帰国、店として可能な範囲の柔軟さ、必要なら率直な終了時期の相談

日本の数字を一つ紹介します。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、宿泊業,飲食サービス業の年次有給休暇の取得率が全産業で最も低く、付与15.9日のうち取得8.0日、取得率50.7%でした(産業計は66.9%)。そうした職場から来た料理人は、辞める日まで休みを求めないことがあります。言われる前に休日を守ってください。

最初の90日

早期退職の多くは、最初の3か月で決まります。担当者に渡すスケジュールは次のとおりです。各行に担当者の名前を入れてください。

時期やること担当
着任の4週間前日本語の雇用条件書を送る:労働時間、休日、業務内容、メニューをだれが決めるか、給与と控除。住居と通勤経路の写真。最初の2週間の予定表。オーナー
1〜3日目空港に迎えに行く。初日は勤務させない。近所、スーパー、最寄りの日系食材店を一緒に歩く。決めておいたスタッフ
1週目銀行、携帯、納税者番号、住民登録などを、経験のある人と一緒に済ませる。最初の営業の前に、厨房のルール、衛生基準、発注の仕組みを説明する。決めておいたスタッフ
2週目フルシフトを始める。最初の給料日の前に、給与明細を1行ずつ説明する。料理長、給与担当
30日目1回目の面談(下の台本)。雇用条件書を一緒に読み、実際と違っていた点に印をつける。オーナー
60日目2回目の面談。料理人に最初に任せるもの(料理、持ち場、仕入れ先との関係)を決める。オーナー、料理長
90日目書面での振り返り。契約に試用期間があれば、その評価。次の昇給見直し日と、役割の次の段階を確認する。オーナー

振り返りの進め方は試用期間の評価をご覧ください。

月1回の面談の台本

月に1回15分、オーナーと料理人で、厨房の外で行います。できれば日本語で、難しければ料理人が信頼できる通訳を入れてください。本音は第二言語ではなかなか出てきません。次の4つの質問で、退職の申し出のおよそ1か月前に兆しがつかめます。

Monthly check-in (15 minutes)
1. Compared with what you expected when you accepted, what is different this month?
2. What took up your days off that should not have?
3. Outside the kitchen, who did you spend time with this month?
4. A year from now, where would you like to be: here, in a different role, or back in Japan?
Close: "Before our next talk, I will change this one thing: [ ]."

月1回の面談(15分)
1. この仕事を引き受けたときの想定と比べて、今月違っていたことは何ですか。
2. 本来なら休日に使わなくてよかったはずのことに、時間を取られましたか。
3. 仕事以外で、今月だれと過ごしましたか。
4. 1年後、どうしていたいですか。この店で続ける、別の役割に就く、日本に戻る、のどれに近いですか。
最後に:「次の面談までに、これを一つ変えます:[ ]」

答えは料理人の言葉のまま書き留めます。4つ目の質問に「日本に戻りたい」と返ってきたら、礼を言い、引き継ぎと次の採用の準備を始めてください。1年前にその答えが聞けることが、この面談から得られる最良の結果です。

2年目、3年目を左右するのはビザの節目

1年目を過ぎると、厨房のどんな要素よりもビザが定着を左右します。次の日付を店と料理人の双方のカレンダーに入れ、それぞれの節目の前に提示する条件を用意しておきます。

節目仕組みその前に提示すること
試用期間の終了契約で決まり、最初の3〜6か月とすることが多い。どちらからも低いコストで雇用を終えられる時期。書面での評価と、最初の昇給の日付
料理人が別の雇用主に移れるようになるオーストラリア:482ビザ保持者は、別のスポンサーがいつでもノミネートでき、雇用が終わった場合は最長180日の間に新しいスポンサーを探せる。カナダ:新しい雇用主が自らLMIAと就労許可を取る必要がある。米国:O-1やE-2で雇用主を変えるには、新しい雇用主自身の申請が必要。シンガポール:新しい雇用主が新たにパスを申請する。12か月時点での給与見直し。料理人に現地の人脈やほかの誘いができる前に行う
就労許可・ビザの更新カナダの低賃金LMIAによる就労許可は最長1年、高賃金は最長3年。米国のO-1は最長3年。自店の許可通知で確認する。更新するかどうかを6か月前に決め、書面で伝える
永住権の申請が可能になるオーストラリア:直前3年のうち2年、同じ職種で482ビザで働くと186ビザ(Temporary Residence Transition)の対象になる。ノミネートは現在の雇用主が行う。カナダ:1年の熟練労働でCanadian Experience Classの対象(料理人はTEER 2)。米国:PERMを経るEB-3のグリーンカードで、待ち期間が長い。シンガポール:決まった時期はない。永住権をスポンサーするかどうか、いつするかを伝える。多くの雇用主にとって最も強い定着策

各制度の詳細:オーストラリア186ビザ、カナダ Express Entry、米国 EB-3。

費用別に見た、変えるべきこと

すべてを実行する必要はありません。最初の2行から始めてください。費用はかからず、最も早く表に出る2つの理由に効きます。

区分対策対応する理由
費用なし、今週できるまずここから:雇用条件書と実際のシフト・業務を照らし合わせ、ずれをすべて直すか説明する仕事が説明と違う
まずここから:今後6か月分の月1回の面談を予定に入れるすべて(早期発見)
休日を固定したシフト表を4週間前に出す労働時間、休息
ビザの日付を双方のカレンダーに入れる先が見えない
社内外に、日本語で話せる相手を1人決める孤立
費用がかかる年1回の日本への往復航空券家族、孤立
12か月と24か月の勤続手当お金、先が見えない
店が費用を出す語学レッスン孤立、裁量
仕組みを変える給与と役割の段階を書面にする先が見えない
永住権のスポンサーについての方針先が見えない
本当の裁量:メニューに載る料理、若手採用への発言権、指導役裁量

費用の返還条項よりも、勤続手当のほうをおすすめします。辞めることを罰するのではなく、残ることに報いる仕組みだからです。また、スポンサー費用の一部は、そもそも労働者に負担させられません。オーストラリアでは、スポンサー承認、ノミネーション、課徴金の費用をビザ保持者から回収することが禁じられています。

効果を確かめる

厨房で採用した人全員について、入社日、退職日、本人の言葉での退職理由、再雇用したいかどうかを1枚のシートに記録します。年に1回、3つの数字を見てください。12か月後も在籍している人の割合、辞めた人の平均在籍期間、最も多い退職理由です。同じ理由が繰り返し出てくるなら、それが来年の計画です。退職者が出たときは退職面談をきちんと行い、予定外の退職への対応は海外採用のリスクと対応をご覧ください。

ビザの節目に関する規則は改正で変わります。オーストラリアの制度は毎年7月1日に見直され、カナダのLMIAの規則は2024年と2026年に変更され、米国のビザブレティンは毎月更新されます。厚生労働省の就労条件総合調査は毎年秋に公表されます。2026年9月27日確認。

よくある質問

海外の日本人料理人はなぜ辞めるのですか。

調べた調査はありませんが、挙がる理由は一貫しています。仕事が約束と違う、最初の1か月でつまずく、孤立、食材や裁量の不足、お金の想定外、ビザの先行きが見えない、家族の事情です。最初の2つは数週間で表に出るので、そこから手を打ちます。

料理人に残ってもらうために、最も安くできることは何ですか。

実際の仕事を書面の条件と照らし合わせ、ずれを直すか説明すること、そして4つの質問を決めた月1回15分の面談です。どちらも費用はかからず、問題が小さいうちに見つけられます。

スポンサーした料理人が最も辞めやすいのはいつですか。

着任がうまくいかなかったり、仕事が説明と違ったりした場合の最初の3か月と、現地に人脈ができて別のスポンサーに移れるようになる1年目の終わりごろです。その前に給与の見直しとビザの話をしてください。

永住権のスポンサーは定着に効きますか。

多くの場合、何よりも効きます。オーストラリアでは482ビザで2年働くと186ビザに移れ、カナダでは1年の熟練労働でCanadian Experience Classの対象になります。支援するかどうか、いつするかを早めに伝えてください。

ビザ費用の返還条項を入れるべきですか。

12か月と24か月の勤続手当のほうが、たいていうまくいきます。オーストラリアではスポンサー承認、ノミネーション、課徴金の費用をビザ保持者から回収することが禁じられており、ほかの国にも同様の制限があるので、返還条項を書く前に確認してください。

一般的な情報であり、法律や移民手続きに関する助言ではありません。料理人が辞める理由は調査がないため、実務から整理したものです。ビザの規則は2026年9月時点の要約です。利用する前に公式ページで確認してください。

出典

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