採用の進め方

海外の日本人料理人の定着:担当者つき日程チェックリスト

海外に呼んだ料理人を定着させるための、担当者を決めた日程つきチェックリスト、優先順位をつけた施策、そして効果を測る方法。日本の本部・オーナー側の実務ガイドです。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

日本国内の宿泊業・飲食サービス業自体が、1年間で23.7%のスタッフを失っています(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)。海外に呼ぶ料理人は、もともと離職の多い業種の出身だということです。早期に辞められれば、ビザも赴任費用も、次の採用までの欠員期間も無駄になります。このページはオーナー側の実務チェックリストです。各段階に担当者を置いた日程つきの計画、何から手をつけるかを示した優先順位、そしてうまくいっているかを確かめる方法をまとめました。国際比較を含む離職率の全体像は飲食店の離職率を、英語での実務全般のガイドはRetaining Japanese chefsをご覧ください。

このページは、すでに日本から料理人を呼んだ、またはこれから呼ぶ日本の本部や日本語話者のオーナーのための実務ガイドです。担当者を決めた日程つきのチェックリスト、優先順位をつけた施策、そして効果を測る方法だけを扱います。離職率の統計と1人辞めた場合のコストは飲食店の離職率にあります。予期しない退職が実際に起きた後の対応(後任探し、引き継ぎ)は海外採用のリスクと対応で扱い、ここでは繰り返しません。

目次

  1. 数字は一つだけ、残りの詳細はどこにあるか
  2. 海外の日本人料理人が辞める理由
  3. 担当者つきの日程チェックリスト
  4. 施策の優先順位:まずこれから
  5. お金の不満を小さくする仕組み
  6. うまくいっているかを確かめる
  7. 辞めるときの設計も先に決める

1. 数字は一つだけ、残りの詳細はどこにあるか

厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によれば、2025年1年間の宿泊業・飲食サービス業の離職率は23.7%で、産業計の13.7%を大きく上回り、全産業のなかで最も高い水準です。この数字ひとつだけで、海外に呼ぶ料理人の最初の1年にここまでの手間をかける理由になります。米国やシンガポールとの比較、年ごとの推移は、当サイトのデータページである飲食店の離職率にまとめており、ここでは繰り返しません。

2. 海外の日本人料理人が辞める理由

「海外で働く日本人料理人がなぜ辞めるか」を調べた公的統計はありません。以下は統計ではなく、構造から起こりやすいと考えられる理由の点検リストとして読んでください。

  1. 聞いていた話と違う。店の規模、業態、任される仕事、勤務時間、住居。面接で伝えた内容と実態のずれは、最も早く離職につながります。
  2. 生活の立ち上げでつまずく。銀行口座、携帯電話、住居、税や社会保険の登録。仕事を始める前に疲れ切ってしまいます。
  3. 孤立。職場に日本語で話せる人がいない、休日に会う人がいない。労働時間が長く、職場の外で人間関係を作る時間が限られます。
  4. 食材と裁量の不足。和食を作るために呼ばれたのに、必要な食材が入らない、献立に口を出せない。職人としての誇りが直接傷つきます。
  5. お金の不安。現地の物価上昇、為替の変動で仕送りが目減りする、昇給の見通しがない。
  6. 先が見えない。ビザの更新ができるのか、永住権への道があるのか、何年いればどうなるのかが分からない。
  7. 家族の事情。日本の家族の介護や、帯同した家族の生活への不適応。店側で完全には防げませんが、帰国休暇の設計で緩和できます。

3. 担当者つきの日程チェックリスト

印刷してお使いください。「担当」の欄は、料理人が着任してからではなく、ビザが下りる前の段階で名前を入れておきます。

時期やること担当
着任前住居の写真、周辺地図、通勤経路を送る。最初の2週間の予定表(出勤日、手続きの日、休日)を送る。現地の手続きに付き添う人を決め、連絡先とともに伝える。日本側でやる手続き(住民票の海外転出、在留届)のチェックリストを渡す。オーナーまたは人事
着任1週目空港に迎えに行く。初日は出勤させない。銀行口座、携帯電話、税番号の登録に同行する。厨房のルール(衛生基準、発注の流れ、現地スタッフの役割分担)を、厨房に立つ前に説明する。担当スタッフ
30日目最初の1対1の面談、最低30分。「聞いていた話と違うことはあるか」「困っていることはあるか」「次の1か月で任せてほしいことはあるか」を聞く。オーナーまたは料理長
90日目2回目の面談、同じ3つの質問。次回の給与見直しの時期を書面で確認する。オーナー
6か月目3回目の面談。ビザ更新や永住権の見通し(後述)と、会社としてどこまで支援するかを伝える。オーナー

これらのどの時点でも、問題が小さいうちに出てくれば、たいてい解決できます。同じ答えが30日目と90日目の両方で出てきたら、雑音ではなく緊急事項として扱ってください。

4. 施策の優先順位:まずこれから

従来のような、優先順位のない定着策の羅列を、小さな店がすべてこなすことはできません。費用と、問題をどれだけ早く捉えられるかで順位をつけます。

優先度施策
最初の3つ、今月中、費用ゼロ役割(献立の権限、仕入れ、スタッフ指導、勤務時間)を文書にし、着任前か着任時に本人と合意する。
30日目・90日目・6か月目の面談を、「落ち着いたら」ではなく、今すぐカレンダーに入れる。
社内外を問わず、日本語で話せる相手を1人指名する。
次の5つ、今四半期中休みを守る。繁忙期に出勤してもらう必要があるときは、先に振替休日を決めてから頼む。
食材の相談窓口をはっきりさせ、現地で実際に買えるものと輸入が必要なものを整理する。
季節の一品や研修セッションを任せ、技術を認める場を目に見える形でつくる。
年1回の給与見直しを、基準とともに正式な制度としてカレンダーに入れる。
採用時に為替が仕送り額に与える影響を説明し、3か月目に驚かせない。
余裕があれば年1回の一時帰国の航空券。
1年目・2年目の節目の勤続手当や賞与。
2号店の料理長や本部の商品開発など、具体的で名指しできるキャリアの道筋。

5. お金の不満を小さくする仕組み

給与水準そのものの比較は寿司職人・和食料理人の年収比較を参照してください。

6. うまくいっているかを確かめる

30日目、90日目、180日目に、毎回同じ3つの質問で短いステイインタビューを行います。聞いていた話と違うことはあるか、困っていることはあるか、次に何を任せてほしいか。料理人ごとに、着任日、各面談日、そして回答が変わったかどうかを1行で記録しておきます。

海外に呼んだ料理人全体で、着任から12か月後に在籍している割合という一つの数字を追いかけてください。これは、どの国の統計よりも多くを教えてくれます。自店の厨房、自店の採用プロセス、自店のマネジメントそのものだからです。この割合が許容できる水準を下回るなら、次の料理人を採用する前に、前章の優先順位を見直してください。

7. 辞めるときの設計も先に決める

何をしても辞める人は出ます。そのときのために最初から設計しておくことも、店を守るという意味で定着策の一部です。

実際に退職が起きた後にどう動くか(防ぐ方法ではなく)は、上記の退職後リスクのガイドで別途扱っており、このページは予防までを範囲とします。

厚生労働省「雇用動向調査」は毎年夏頃に公表されます。23.7%は2025年の数字です。次回確認は2026年調査の公表後、2027年夏頃を予定しています。

よくある質問

海外の日本人料理人はなぜ辞めるのですか。

直接それを測った調査はありませんが、繰り返し挙がる理由は、聞いていた話と実態のずれ、生活の立ち上げでのつまずき、孤立、食材や献立への裁量の不足、お金の不安、ビザの先行きが見えないこと、そして日本の家族の事情です。

まず知っておくべき数字は何ですか。

日本国内の宿泊業・飲食サービス業自体が、1年間で23.7%のスタッフを失っている(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」)ことです。全産業計13.7%に対して最も高い水準で、海外に呼ぶ料理人は、もともと離職の多い業種の出身だということになります。

30日目と90日目には何を確認すればよいですか。

毎回同じ3つの質問です。聞いていた話と違うことはあるか、困っていることはあるか、次に何を任せてほしいか。30日目で小さいうちに捉えられた問題はたいてい解決できますが、90日目に同じ不満が繰り返されたら緊急事項です。

小さな店は、どの定着策から始めればよいですか。

今月中に、費用ゼロでできる3つからです。役割を文書にして本人と合意すること、30日目・90日目・6か月目の面談を今すぐカレンダーに入れること、日本語で話せる相手を1人指名すること。給与や渡航の手当は、その後で構いません。

定着策がうまくいっているかどうかは、どう確認しますか。

一つの数字を追いかけてください。海外に呼んだ料理人のうち、着任から12か月後に在籍している割合です。30日目・90日目・180日目に同じ3つの質問でステイインタビューを行い、料理人ごとに1行で記録し、回答が時間とともに変わるかを見ます。

本記事は一般的な情報であり、法務・労務・入管に関する助言ではありません。海外の日本人料理人の離職理由に関する公的統計は見つからなかったため、その部分は統計ではなく実務上の整理として記載しています。

出典

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