採用の進め方

クルーズ船で料理人を雇う:MLC 2006・ビザ・給与

日本人料理人が船上で働くと何が変わるか。雇用契約に署名するのは誰か、MLC 2006の労働時間・送還・手数料のルール、寄港国ごとの乗員ビザ、公的な給与統計がない中での待遇の決め方を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

クルーズ船で日本人料理人を採用するには、誰が船員雇用契約に署名するか(船舶所有者、コンセッショネア、配乗会社のいずれか)を取り決め、2006年の海上の労働に関する条約(MLC 2006)が定める労働時間・送還・採用手数料負担者のルールを満たし、米国の港に寄港する場合はC-1/D乗員ビザ(手数料US$185、面接必須)を手配する必要があります。船上勤務者の給与に関する公的な統計はないため、陸上の同等職の給与を基準に、乗船・下船を繰り返す契約形態と船舶所有者が法律上負担する費用を調整して待遇を組み立ててください。

このページは、クルーズ会社のF&B責任者、船上でレストランを運営するコンセッショネア、日本人料理人を船に配乗する配乗会社向けです。陸上の厨房と船のギャレーとで何が変わるか、すなわち雇用契約、MLC 2006、乗員ビザを扱います。比較の基準となる陸上市場の給与は国別の寿司職人の給与、乗員ビザ以外の米国ビザの全体像は飲食店向けの米国ビザの比較をご覧ください。

目次

  1. 船上では仕事がどう変わるか
  2. 海の上の雇用主は誰か
  3. MLC 2006:ギャレー(船内厨房)スタッフに関する基本
  4. 船上勤務の公的な給与統計がない中での待遇の決め方
  5. 寄港国ごとの乗員ビザ
  6. 船で働く日本人料理人の見極め方
  7. 手順のまとめ

1. 船上では仕事がどう変わるか

必要な調理技術は陸上と同じです。専門職については鉄板焼きシェフの採用とおまかせ寿司職人の採用をご覧ください。

2. 海の上の雇用主は誰か

クルーズ船では、料理人を採用する者と雇用契約に署名する者が同じとは限りません。採用は配乗会社(マニング会社)、レストランを運営するコンセッショネア(営業委託先)、またはクルーズ会社自身が行います。国際労働機関(ILO)によると、MLC 2006のもとでは、クルーズ船の旅客サービスに従事する人のようにコンセッショネアのもとで働く船員であっても、船舶所有者またはその代理人が署名した船員雇用契約が必要です。

コンセッショネアや配乗会社として日本人料理人を送り出す場合は、誰が署名するかを船舶所有者と取り決め、料理人が渡航前に署名済みの最終版を確認できるようにしてください。

3. MLC 2006:ギャレー(船内厨房)スタッフに関する基本

MLC 2006は2006年2月23日に採択され、2013年8月20日に発効しました。ILOによると113の加盟国が批准しており、世界の商船総トン数の96.6%をカバーしています。条約は各旗国の法律を通じて適用されるため細部は異なりますが、次の点はおおむね共通です。

項目MLC 2006の定め
船舶料理人旗国の法令に従い訓練を受け、資格を持ち、能力を認められている必要がある。18歳未満であってはならない
基本的な安全訓練すべての船員が、船上での勤務開始前に個人の安全に関する訓練を修了している必要がある
雇用契約明確な書面による、法的に執行可能な契約。船舶所有者と船員がそれぞれ署名済みの原本を持ち、船上に写しを備える
労働時間24時間で最大14時間・7日間で最大72時間の労働、または24時間で最低10時間・7日間で最低77時間の休息
送還船員の費用負担なしで送還を受ける権利。権利が生じるまでの最長勤務期間は12か月未満でなければならない
採用手数料本国の健康証明書、船員手帳、パスポートの費用を除き、募集・職業紹介の手数料を船員に負担させてはならない。ビザの費用は船舶所有者が負担する

実務上の意味は2つあります。1つ目に、日本で調理師免許を持つ料理人でも、船舶料理人として働くなら旗国の要件を満たす必要があり、旗国がどの訓練や証明書を求めるかを船舶所有者に確認してください。2つ目に、ビザと乗船にかかる費用は料理人ではなく船舶所有者が負担するため、陸上のレストランから来る料理人はそれを想定していない前提で、オファーの段階で明記してください。

4. 船上勤務の公的な給与統計がない中での待遇の決め方

確認した限り、どの旗国や労働当局も船上で働く料理人の給与統計を公表しておらず、給与と条件は船舶所有者と適用される労働協約によって決まります。相場を探すのではなく、次の考え方で組み立ててください。

  1. 陸上の同等職を基準にする。その船が乗組員を集める市場の公式な数字、例えば国別の寿司職人の給与にある専門職の水準を、出発点として使ってください。
  2. ローテーションを調整に入れる。陸上の年収は12か月分働く前提です。船員は決まった期間の契約で働き、次の契約まで無給になります。名目の年収ではなく、実際に働いた月数あたりの実質給与で比較してください。
  3. 船舶所有者がすでに負担している分を織り込む。キャビン、食事、そしてMLC 2006のもとでのビザ・送還費用は、いずれも陸上の給与なら自己負担になる部分です。これらをパッケージの一部として明記してください。
  4. チップやサービスチャージの方針を確認する。クルーズ会社は部門横断でサービスチャージをプールするのが一般的です。ギャレーにも分配されるかは、候補者が直接尋ねてくる条件です。

5. 寄港国ごとの乗員ビザ

多くのクルーズ航路は米国の港に寄港します。米国務省は、乗員(D)ビザが必要な人の例として、クルーズ船の調理人やウェイターを挙げています。要点は次のとおりです。

米国以外では、オーストラリアが海上乗員ビザ(Maritime Crew Visa、サブクラス988)を運用しており、同国内務省は、対象の国際航路に配乗された外国人乗員とその配偶者・扶養する子どもが、海路でオーストラリアに入国することを認める制度と説明しています。手数料や有効期間は確認できなかったため、内務省または船舶代理店に現行の条件を確認してください。カナダ、EU、その他の寄港地については、独自に確認できるページを見つけられませんでした。乗員ビザのルールはMLC 2006ではなく寄港国ごとに定められているため、船舶代理店または旗国のP&I担当者に個別に確認してください。

乗船港が決まったら、すぐに日本での米国ビザの面接を予約してください。MLC 2006のもとではビザ費用は船舶所有者の負担であり、料理人は乗員ビザで米国の陸上の仕事に就くことはできません。

6. 船で働く日本人料理人の見極め方

  1. 自船のメニューでの技術。必要ならリモートで実技試験を行います。料理人のスキルをリモートで確認する方法をご覧ください。
  2. 冷凍・保管された魚の扱い。毎朝鮮魚を仕入れるのではなく、何日も冷凍・保管された魚をどう見極め、どう扱うかを聞いてください。
  3. 量とペース配分。最も忙しかった営業と、そのときの仕込みの計画を聞きます。
  4. 船内生活。何か月も共同生活をした経験があるか、休日に何を求めるかを率直に聞いてください。
  5. 語学。ギャレーは多国籍のチームです。料理人には、指示を出し、指示に従うのに安全上十分な英語力が必要です。和食厨房の語学要件をご覧ください。

7. 手順のまとめ

  1. 船員雇用契約に署名するのは船舶所有者かその代理人かを取り決める。
  2. 料理人の職務について旗国の訓練・証明書の要件を確認する。
  3. 陸上の基準額を出発点に、ローテーション、船側負担の費用、サービスチャージの方針を調整してオファーを組み立てる。
  4. 募集と実技確認を行い、契約期間、ローテーション、キャビンの条件を早めに伝える。
  5. 労働時間、休暇、送還、ビザ費用の負担者を明記した書面の契約を交付する。
  6. 米国寄港の場合はC-1/Dビザを手配し、オーストラリアやその他の寄港地は内務省または船舶代理店に確認する。
  7. 乗船までの移動と、船上での最初の1週間を計画する。

変わりうる数字:米国務省のページから引用したUS$185の乗員ビザ手数料と面接要件、ILOが更新するMLC 2006の批准国数(113か国)。オーストラリアの海上乗員ビザの手数料、カナダやEUの乗員ルールは確認したページで検証できなかったため、航路を確定する前に再確認してください。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

クルーズ船で働く料理人の雇用契約には誰が署名しますか。

MLC 2006のもとでは、コンセッショネアや配乗会社が採用を行う場合でも、船員雇用契約には船舶所有者またはその代理人の署名が必要です。渡航前にこれを取り決め、料理人が署名済みの最終版を確認できるようにしてください。

料理人がビザを取得し乗船するための費用は誰が負担しますか。

船舶所有者です。MLC 2006は、本国の健康証明書、船員手帳、パスポートの費用を除き、募集・職業紹介の手数料を船員に負担させることを禁じており、ビザ費用は船舶所有者の負担としています。

日本人料理人が米国で乗船する場合、どのビザが必要ですか。

乗員(D)ビザで、多くの場合C-1通過ビザと組み合わせます。返金不可の手数料はUS$185、面接は原則として必要で、このビザは到着した船での勤務にのみ使え、陸上での就労は認められず、29日以内に船で出国する必要があります。

船上で働く日本人料理人にはいくら払うべきですか。

船上勤務者の公的な給与統計はありません。陸上の公式な基準額を出発点にし、船員は決まった契約期間で働きその後は無給になる点を調整し、キャビン、食事、船舶所有者負担のビザ・送還費用の価値を上乗せして考えてください。これらは陸上の給与であれば自己負担になる部分です。

米国の乗員ビザのルールは航路上のすべての寄港地に当てはまりますか。

当てはまりません。乗員ビザの要件はMLC 2006ではなく寄港国ごとに定められています。米国のルールは確認でき、オーストラリアの海上乗員ビザについても概要を確認できましたが、カナダやEU、その他の寄港地については、航路を確定する前に船舶代理店または旗国のP&I担当者に確認してください。

本記事は一般的な情報であり、法律・移民手続きに関する助言ではありません。MLC 2006は各旗国の法律を通じて適用され、個々の船の条件は旗国と適用される労働協約によって異なります。米国とオーストラリアのビザのルールと手数料は2026年9月時点で下記の政府ページから引用しており、変更される可能性があります。実際の手続きの前に、船舶所有者、その代理店、関係国の当局に確認してください。

出典

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