中東・中南米

クルーズ船の日本人料理人採用:MLC 2006とC-1/Dビザ

日本人料理人が船上で働くと何が変わるか。雇用契約に署名するのは誰か、労働時間・送還・手数料に関するMLC 2006のルール、米国のC-1/D乗員ビザを解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 船上では仕事がどう変わるか
  2. 海の上の雇用主は誰か
  3. MLC 2006:ギャレー(船内厨房)スタッフに関する基本
  4. 米国の乗員ビザ(C-1/D)
  5. 船で働く日本人料理人の見極め方
  6. 手順のまとめ

クルーズ会社は船上で日本食のスペシャリティレストラン、寿司バー、鉄板焼きのテーブルを運営しており、船のギャレー(厨房)から何週間にもわたってレストラン水準の料理を出せる料理人を必要としています。船での採用は、陸上のレストランの採用と2つの点で異なります。料理人の労働条件は、寄港する国の法律ではなく、国際条約と船の旗国の法律で決まります。そして料理人は、複数の国で乗船・下船するための渡航書類を必要とします。本記事では、米国の乗員ビザを主な例として、2026年9月時点のこの2点を解説します。

1. 船上では仕事がどう変わるか

必要な調理技術は陸上と同じです。専門職については鉄板焼きシェフの採用おまかせ寿司職人の採用をご覧ください。

2. 海の上の雇用主は誰か

クルーズ船では、料理人を採用する者と雇用契約に署名する者が同じとは限りません。採用は配乗会社(マニング会社)、レストランを運営するコンセッショネア(営業委託先)、またはクルーズ会社自身が行います。国際労働機関(ILO)によると、2006年の海上の労働に関する条約(MLC 2006)のもとでは、クルーズ船の旅客サービスに従事する人のようにコンセッショネアのもとで働く船員であっても、船舶所有者またはその代理人が署名した船員雇用契約(seafarers' employment agreement)が必要です。

コンセッショネアや配乗会社として日本人料理人を送り出す場合は、誰が署名するかを船舶所有者と取り決め、料理人が渡航前に署名済みの最終版を確認できるようにしてください。

3. MLC 2006:ギャレー(船内厨房)スタッフに関する基本

MLC 2006は2006年2月23日に採択され、2013年8月20日に発効しました。ILOによると113の加盟国が批准しており、世界の商船総トン数の96.6%をカバーしています。条約は各旗国の法律を通じて適用されるため、細部は国によって異なります。料理人の採用に特に関係するのは次の点です。

項目MLC 2006の定め
船舶料理人旗国の法令に従い訓練を受け、資格を持ち、能力を認められている必要がある。船舶料理人は18歳未満であってはならない
基本的な安全訓練職務にかかわらず、すべての船員が船上での個人の安全に関する訓練を修了している必要がある
雇用契約明確な書面による、法的に執行可能な契約。船舶所有者と船員がそれぞれ署名済みの原本を持ち、船上に写しを備える
労働時間24時間で最大14時間・7日間で最大72時間の労働、または24時間で最低10時間・7日間で最低77時間の休息
送還船員の費用負担なしで送還を受ける権利。送還の権利が生じるまでの最長勤務期間は12か月未満でなければならない
採用手数料募集・職業紹介の手数料を船員に負担させてはならない(本国の健康証明書、船員手帳、パスポートの費用を除く)。ビザの費用は船舶所有者が負担する

実務上の意味は2つあります。1つ目に、日本で調理師免許を持つ料理人でも、船舶料理人として働くなら旗国の要件を満たす必要があります。旗国がどの訓練や証明書を求めるかを船舶所有者に確認してください。2つ目に、ビザと乗船にかかる費用は料理人ではなく船舶所有者が負担します。陸上のレストランから来る料理人はそれを想定していないので、オファーの段階で明記してください。

4. 米国の乗員ビザ(C-1/D)

多くのクルーズ航路は米国の港に寄港します。米国務省は、乗員(D)ビザが必要な人の例として、クルーズ船の調理人やウェイターを挙げています。同省の案内の要点は次のとおりです。

Dビザは米国のレストランで働くためのビザではありません。陸上でもレストランを運営していて、同じ料理人にそこで働いてもらいたい場合は、まったく別のビザが必要です。飲食店向けの米国ビザの比較をご覧ください。

乗船港が決まったら、すぐに日本での米国ビザの面接を予約してください。MLC 2006のもとではビザ費用は船舶所有者の負担であり、料理人は乗員ビザで米国の陸上の仕事に就くことはできません。

航路上のほかの国にも、乗員に関する独自のルールがある場合があります。本記事で確認したのは米国のルールのみです。各寄港国については船舶代理店に確認してください。

5. 船で働く日本人料理人の見極め方

  1. 自船のメニューでの技術。必要ならリモートで実技試験を行います。料理人のスキルをリモートで確認する方法をご覧ください。
  2. 冷凍・保管された魚の扱い。冷凍して何日も保管した魚をどう見極め、どう扱うかを聞いてください。毎朝鮮魚を仕入れることに慣れた料理人には、適応できることを示してもらう必要があります。
  3. 量とペース配分。最も忙しかった営業と、そのときの仕込みの計画を聞きます。
  4. 船内生活。何か月も共同生活をした経験があるか、休日に何を求めるかを率直に聞いてください。
  5. 語学。クルーズ船のギャレーは多国籍のチームです。料理人には、指示を出し、指示に従うのに安全上十分な英語力が必要です。和食厨房の語学要件をご覧ください。

船上で働く日本人料理人の給与に関する公的な統計はないため、数字は示しません。給与と条件は、船舶所有者と適用される労働協約によって決まります。

6. 手順のまとめ

  1. 船員雇用契約に署名するのは船舶所有者かその代理人かを取り決める。
  2. 料理人の職務について、基本的な安全訓練を含む旗国の訓練・証明書の要件を確認する。
  3. 募集と実技確認を行い、契約期間、ローテーション、キャビンの条件を早めに伝える。
  4. 労働時間、休暇、送還、ビザ費用の負担者を明記した書面の契約を交付する。
  5. 米国に寄港する場合は、雇用主の書簡を用意し、C-1/Dビザを手配する。
  6. 乗船までの移動と、船上での最初の1週間を計画する。

本記事は一般的な情報であり、法律・移民手続きに関する助言ではありません。MLC 2006は各旗国の法律を通じて適用され、個々の船の条件は旗国と適用される労働協約によって異なります。米国のビザのルールと手数料は2026年9月時点で下記の米国務省のページから引用しており、変更される可能性があります。実際の手続きの前に、船舶所有者、その代理店、米国大使館に確認してください。

出典

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