採用の進め方

料理人の包丁・道具のルール:手当と携帯の法律

自前の包丁か店の包丁か、米国・カリフォルニア州・オーストラリア・英国のルールで道具代を誰が負担するか、英国と日本の刃物携帯の法律、日本から包丁を持ち込む際の注意点を解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 和食の厨房に包丁のルールが必要な理由
  2. 自前の包丁か、店の包丁か
  3. 費用は誰が負担するか:手当と法律
  4. 包丁を持って通勤する場合
  5. 日本から包丁を持ち込む場合
  6. 書面のルールに盛り込む内容

日本の料理人にとって包丁は自分の分身のようなものです。刺身用の柳刃、魚をおろす出刃、野菜用の薄刃。多くの料理人は見習いの頃に最初の包丁を買い、何年も自分で研いできました。店でも自分の包丁を使うつもりで来ますし、誰がそれに触れるかをとても気にします。

そこから、何か問題が起きるまで多くの雇用主が考えない実務上の疑問が生まれます。包丁や研ぎの費用は誰が払うのか。職場で包丁が傷ついたり盗まれたりしたらどうするのか。料理人は包丁を持ってバスで帰宅してよいのか。本記事では、選択肢と、米国、英国、オーストラリア、日本について確認できた法律上のポイントを解説します。

1. 和食の厨房に包丁のルールが必要な理由

2. 自前の包丁か、店の包丁か

方式向いている場合注意点
料理人が自分の包丁を持参自分の包丁一式を持つ日本人のベテラン料理人道具に関する給与のルール(第3節)、紛失と破損、保管、通勤時の持ち運び
店がすべての包丁を用意現地の調理スタッフ、見習い、入れ替わりの多い職種初期費用、仕事に見合う品質、誰がどの包丁を使えるかの明確なルール
併用:店の包丁一式と、個人の専門的な包丁ほとんどの混成チームの厨房店の包丁と個人の包丁を取り違えないよう、印を付けて別々に保管する

どの方式を選んでも、台帳を作っておきましょう。厨房に持ち込まれた個人の包丁ごとに、写真、簡単な説明、持ち主の名前を記録します。退職時の揉め事を防ぎ、保険請求にも役立ちます。

3. 費用は誰が負担するか:手当と法律

スタッフに自分の道具を用意させるのは、中立的な選択ではありません。場合によっては雇用主に費用負担を求めるルールがある国がいくつもあります。

米国(連邦)

公正労働基準法(FLSA)の規則では、賃金は「無条件で(free and clear)」支払われなければなりません。29 CFR 531.35は、雇用主の業務で使う、または業務に特に必要な商売道具(tools of the trade)を従業員に用意させる場合、その道具代によって最低賃金や残業代の支払いが法定額を下回る週があれば、同法違反になるという例を挙げています。給与の高い寿司職人なら問題にならないこともありますが、最低賃金に近い調理スタッフでは問題になりえます。

カリフォルニア州

飲食店に適用される産業福祉委員会(IWC)の賃金命令第5号は、雇用主が道具や器具の使用を求める場合、または仕事に必要な場合は、雇用主がそれを用意し維持しなければならないと定めています。例外は、最低賃金の2倍以上の賃金を得ている従業員で、その職種で慣習的に必要とされる手道具や器具を自分で用意・維持するよう求めることができます。カリフォルニア州の最低賃金は2026年1月1日から時給16.90ドルで、市によってはより高い最低賃金を定めています。つまりカリフォルニア州では、最低賃金に近い給与の調理スタッフに自分の包丁を持参させることはできず、最低賃金の2倍を大きく上回る給与のベテラン料理人であれば認められる可能性があります。

オーストラリア

レストラン業界アワード2020(Restaurant Industry Award 2020、2026年7月1日時点の統合版)第21.4条は、自分の道具を用意して使うよう求められている調理人・見習い調理人(道具手当を受けていない人)に対し、雇用主が1日または1日未満ごとに2.03ドル、週9.94ドルを上限とする道具・器具手当を支払うよう定めています。また、従業員が用意するよう求められ、雇用主が支給も支払いもしていないタオル、道具、包丁、チョッパー、器具、調理用具その他の資材の購入費用を、雇用主が払い戻さなければなりません。スタッフがこのアワードの対象か、別の協約の対象かを確認してください。

英国

全国最低賃金に関するGOV.UKのガイダンスは、道具、ユニフォーム、安全装備など、労働者が仕事のために購入し払い戻しを受けていないものは、最低賃金を満たしているかを確認する際に給与から差し引いて計算するとしています。最低賃金に近い給与の料理人に包丁を買わせる場合は、その購入で最低賃金を下回らないか確認してください。

和食の厨房向けのシンプルで公平なモデルは、全員が使える店の包丁一式を用意し、自分の専門的な包丁を使うベテラン料理人には書面で定めた包丁手当と、研ぎの外注費や砥石代を支払う形です。上記のルールの範囲内に収まり、料理人の道具を尊重しているという姿勢も伝わります。

4. 包丁を持って通勤する場合

イングランドとウェールズ

1988年刑事司法法(Criminal Justice Act 1988)第139条は、刃または尖った先を持つ物を公共の場所で所持することを犯罪としています。刃渡り3インチ以下の折りたたみ式ポケットナイフは対象外です。正当な理由または法的権限があったことを証明すれば抗弁となり、同条は「仕事で使うため」を具体的に挙げています。この規定はイングランドとウェールズに適用されるもので、北アイルランドには同等の規定があり、スコットランドは刑事法が別体系のため、同地域で営業する場合はスコットランドのルールを確認してください。

抗弁は、包丁を持っていた本人が証明しなければなりません。料理人への実務的なアドバイスは次のとおりです。

また、同法第141A条は、イングランドとウェールズで18歳未満の人に刃物を販売することを犯罪としています。18歳未満の人を厨房で雇う場合は、包丁を店で用意してください。

日本

日本の銃砲刀剣類所持等取締法第22条は、業務その他正当な理由による場合を除き、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を携帯することを禁じています。日本国内で包丁を運ぶ料理人(たとえば空港まで)は、身に付けず、旅行用に荷造りした状態にしておくべきです。

その他の国

刃物の携帯に関する法律は国によって、米国では州や市によっても異なります。どこでも同じ実務ルールを守ってもらいましょう。必要なときだけ、荷造りして見えない状態で、自宅と職場の間を寄り道せずに運ぶことです。

5. 日本から包丁を持ち込む場合

これらは着任前に渡す資料に盛り込んでください(日本から来る料理人のオンボーディング料理人の赴任パッケージ参照)。

6. 書面のルールに盛り込む内容

  1. 店が用意する包丁と、自分の包丁を使ってよい(または使わなければならない)職種。
  2. 包丁・道具の手当の有無と、研ぎの費用の扱い。
  3. 個人の包丁の台帳と、持ち主の許可なく他人の包丁を使わないというルール。
  4. 保管方法:個人の包丁は施錠できる場所か専用の場所に保管し、すべての包丁に洗浄基準を適用する。
  5. 職場での紛失・破損:店の保険が個人の包丁を補償するか、補償しない場合はどうするか。
  6. 持ち運び:荷造りして、寄り道せず、できるだけ店で保管する。
  7. 研修:新しいスタッフに包丁の安全な使い方と研ぎ方をどう教えるか。
  8. 退職時:個人の包丁は持ち主が持ち帰り、店の包丁は返却して状態を確認する。

このルールは、雇用契約のチェックリストとともに、日本語と英語で契約書類一式に入れておきましょう。

本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。賃金や刃物に関する法律は国・州・市によって異なります。包丁のルールを定める前に、現地のルールをご確認ください。

出典

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