市場データ・制度

農林水産物・食品輸出額2025と2030年海外展開目標

2025年の輸出額1兆7,005億円と2026年1〜7月の実績を、海外展開する外食企業・食品事業者の視点で整理。2030年目標(外食の海外展開収益3兆円を含む)、輸出先と品目の動き、使える国の枠組みまで解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

日本の農林水産物・食品輸出額は2025年に過去最高の1兆7,005億円、前年比12.8%増となりました。食料・農業・農村基本計画は2030年に5兆円という目標を掲げています。同じ計画にあるもう一つの目標、食品産業の海外展開による収益額3兆円には、海外での外食産業のフランチャイズ展開が明確に含まれています。農水省の戦略はこれを政策目標として掲げ、融資、伴走支援、認定制度が用意されています。飲食企業にとって、輸出の伸びは市場の需要を示す指標であり、3兆円という目標のほうが、実際に自社に関わる部分です。

このページは、海外展開の根拠を固めたい日本の外食・食品企業向けです。輸出統計、2030年の政策目標とその中での外食展開の位置づけ、展開企業が使える政府の制度を扱います。同じ農水省の輸出データを、すでに海外で運営しているオーナーの視点、仕入れと採用への影響を中心に読んだものは海外の和食店への意味を読む輸出データにあります。市場としての根拠が固まったあとの人員計画とその費用は、海外出店の人件費予算と料理人1人の採用コスト総額にあります。

目次

  1. 2025年の輸出実績と2026年の推移
  2. 2030年目標と、外食展開の位置づけ
  3. 輸出先とレストラン数の対比
  4. 品目別の伸びと、そこから読めること
  5. 展開企業が使える政府の制度
  6. 市場の根拠から人員計画へ
  7. 数字を読むときの注意点
  8. よくある質問

1. 2025年の輸出実績と2026年の推移

農林水産省(MAFF)は、財務省貿易統計をもとに農林水産物・食品の輸出額を毎月公表しています。2025年の輸出額は1兆7,005億円で、前年(1兆507億円)比1,934億円、12.8%の増加、13年連続の過去最高で、主要な輸出先すべてで増加しました。

2026年に入っても伸びは続いています。1〜7月の輸出額は1兆423億円で、前年同期比11.0%増でした。農水省の次回発表(2026年8月分)は2026年10月2日の予定です。

2. 2030年目標と、外食展開の位置づけ

食料・農業・農村基本計画(2025年4月11日閣議決定)は、日本の農林水産業・食品産業の「海外で稼ぐ力」の強化をうたい、2030年に向けて3つの目標を掲げています。

目標2030年目標値直近の実績
農林水産物・食品の輸出額5兆円1兆7,005億円(2025年)
食品産業の海外展開による収益額3兆円1.6兆円(2022年)
インバウンドによる食関連消費額4.5兆円2.3兆円(2024年)

2つ目の目標が、外食企業に直接関わる部分です。輸出拡大実行戦略(2025年5月改訂)は、この収益額に食品製造業・卸売・小売業と並んで外食産業の海外展開を含むとしたうえで、小規模な企業も含めた外食産業のフランチャイズ展開や食品メーカー等による現地でのライセンス生産の推進を明記しています。政策としては、輸出と海外出店は別々の課題ではなく一つの課題であり、以下の輸出の伸びは需要の証拠、3兆円という目標はそれを後押しするという政府自身のコミットメントです。

3. 輸出先とレストラン数の対比

順位仕向地2025年輸出額(億円)前年比日本食レストラン数2025年(農水省)
1米国2,762+13.7%26,360
2香港2,228+0.9%1,480
3台湾1,812+6.4%7,100
4中国1,799+7.0%63,500
5韓国1,094+20.0%19,800
6ベトナム954+10.6%1,820
7タイ735+17.1%5,920
8シンガポール563+1.2%1,140
9ロシア414+439.3%2,520
10オーストラリア382+16.6%2,230

レストラン数と並べると、輸出と外食展開という2つの課題がどこで最もかけ離れているかが見えます。中国は日本食レストラン数がずば抜けて多い一方、輸出額は比較的控えめで、現地・近隣国からの調達に頼った成長であることがうかがえます。香港とシンガポールはレストラン数に比べて輸入が多く、新規出店の初日から使える小売・流通網がすでに確立していることを示します。韓国(+20.0%)、タイ(+17.1%)、オーストラリア(+16.6%)は全体の12.8%を上回るペースで伸びており、輸出の伸びに対してまだ日本食レストランの数が追いついていない可能性がある市場です。

4. 品目別の伸びと、そこから読めること

品目2025年の増加額農水省が挙げる主な理由
緑茶+355億円(+98.2%)欧州・米国・ASEAN向け、ラテやスイーツ用の粉末茶(抹茶を含む)
ほたて貝+211億円(+30.4%)ベトナム向け加工用の冷凍丸ほたてと、現地加工の増加
ぶり+113億円(+27.4%)米国向け、脂ののった大型魚への需要による単価上昇
牛肉+83億円(+12.8%)欧州・米国・アジア向け、既存・新規の両チャネルでの伸び
ソース混合調味料+52億円(+7.8%)米国・アジア向け、マヨネーズやごま・しそなど風味への需要

2026年に入っても同じ品目が伸びを牽引しており、1〜7月の増加額が最も大きかったのは緑茶、ぶり、さばで、生きうなぎとイワシは減少しました。海外市場を検討する企業にとって、あるカテゴリーの伸びが続いていることは2つを示します。ひとつは供給網が使いやすくなっていること、もうひとつは消費者の味覚がすでにその味に慣れ始めていることです。特に緑茶がほぼ倍増していることは、それまで抹茶にあまり触れてこなかった市場でも、カフェやスイーツの形態が広がりつつあることを示唆します。

5. 展開企業が使える政府の制度

輸出拡大実行戦略には、モノの輸出だけでなく、外食企業の海外展開そのものに使える施策がいくつか挙げられています。

いずれの制度も、簡潔な適格要件の一覧や確定した支援額を示しているわけではありません。自社の規模、体制、展開先によって当てはまり方が変わるため、この章は予算を組み立てる根拠表ではなく、まず問い合わせる窓口の一覧として使ってください。

6. 市場の根拠から人員計画へ

輸出と政策の裏付けは、需要がどこで伸びているか、そして政府が外食展開をその成長の一部として後押ししたいと考えていることまでは示します。しかし、人の面でいくらかかり、どれだけ時間がかかるかまでは教えてくれません。出店計画が実際に狂うのは、たいていこの部分です。上の数字から市場を選んだあとは、人員計画とその費用が次の問いになります。

7. 数字を読むときの注意点

農水省の輸出統計は毎月公表され、次回(2026年8月分)は2026年10月2日の予定です。2025年の年間確定値は変わりません。海外展開収益とインバウンド食関連消費の目標は測定頻度がずっと低く、直近はそれぞれ2022年、2024年の実績にとどまるため、引用する前に農水省の輸出拡大実行戦略のページで最新版をご確認ください。

よくある質問

日本の農林水産物・食品輸出の2030年目標はいくらですか。

5兆円です。食料・農業・農村基本計画(2025年4月11日閣議決定)で定められています。2025年の実績は1兆7,005億円で、金額ベースでは目標のおよそ3分の1に達していますが、計画自体は2030年までの目標です。

この輸出政策は、海外に出店する外食企業も対象になりますか、それともモノの輸出だけですか。

両方です。同じ計画には、食品産業の海外展開による収益額3兆円という別の目標があり、農水省の輸出拡大実行戦略は、食品製造業やライセンス生産と並んで、外食産業のフランチャイズ展開の推進をこの目標を達成する手段のひとつとして明記しています。

海外展開する外食企業はどんな支援を使えますか。

日本政策金融公庫の長期・低利融資、投資円滑化法によるLPS形式の投資スキーム、JETROと中小機構による伴走支援、そして補助金ではなく認定・顕彰の仕組みである日本産食材サポーター店認定制度があります。いずれも公表された適格要件の一覧はないため、各機関に直接、自社が対象になるか確認してください。

既存の日本食レストランの数に対して、輸出の伸びが特に大きい市場はどこですか。

韓国(+20.0%)、タイ(+17.1%)、オーストラリア(+16.6%)はいずれも2025年の全体平均12.8%を上回るペースで伸びており、香港やシンガポールに比べると、輸出額の規模に対して日本食レストランの数はまだ控えめです。

どの品目が伸びを牽引しており、新規出店にとって何を意味しますか。

2025年から2026年にかけて緑茶(+98.2%、主に飲料・スイーツ用の抹茶)、ほたて貝(+30.4%)、ぶり(+27.4%)が最も伸びました。あるカテゴリーの伸びが続いているということは、供給網が使いやすくなっていることと、消費者の味覚がすでに形成されつつあることの両方を示し、新しい市場でのメニューコンセプトを選ぶ際の参考になります。

市場の根拠が固まったあと、人員計画はどこを見ればよいですか。

海外出店の人件費予算に出店時の人員構成と月次コストを、料理人1人の採用コスト総額に日本から料理人を呼び寄せる際のビザ費用を含む一時的なコストをまとめています。

本記事は一般的な情報であり、貿易や投資の助言ではありません。数字は農林水産省の公表資料(財務省貿易統計にもとづき農水省が作成)を、2026年9月時点で確認しています。

出典

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