市場データ・制度

農林水産物・食品の輸出額2025:事業者向け解説

2025年の輸出額1兆7,005億円と2026年1〜7月の実績を、海外展開する外食企業・食品事業者の視点で整理。2030年目標、輸出先と品目の動き、読み方の注意、使える国の枠組みまで解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 2025年の輸出額と2026年の足元
  2. 2030年目標と「海外から稼ぐ力」
  3. 農産物・林産物・水産物の内訳
  4. 輸出先の上位と伸び
  5. 品目の動き:伸びたもの、減ったもの
  6. 外食企業・食品事業者はどう読むか
  7. 使える国の枠組み
  8. 数字を読むときの注意

農林水産物・食品の輸出額は、農林水産省が財務省の貿易統計をもとに毎月公表しています。海外に出店する外食企業や、海外の和食店に食材を届けたい食品事業者にとっては、どの国で日本の食が広がっているか、どの品目に追い風が吹いているかを知るための基礎データです。

この記事では、2025年の年間実績と2026年1〜7月の実績を、日本の事業者の視点で整理します。海外の店舗オーナー向けに、同じデータを現地での調達や求人の観点から読んだ英語の解説はJapanese food exports dataにあります。

1. 2025年の輸出額と2026年の足元

2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円で、前年(1兆5,071億円)から1,934億円、12.8%増えました。13年連続で過去最高を更新し、主要な輸出先の国・地域のすべてで前年を上回りました。

農林水産省は関係者への聞き取りから、日本食への関心の高まり、インバウンドによる日本食の認知度向上、健康志向の高まりなどを背景に、既存の商流での取扱量の拡大や新しい商流の獲得が進んだことを増加の要因に挙げています。

2026年に入っても増加が続いています。1〜7月の累計は1兆423億円で、前年同期比11.0%増です。7月単月は1,446億円(12.0%増)でした。8月分は2026年10月2日に公表される予定です。

2. 2030年目標と「海外から稼ぐ力」

「食料・農業・農村基本計画」(2025年4月11日閣議決定)は、農林水産業・食品産業の「海外から稼ぐ力」を強化する方針のもと、2030年に向けて3つの目標を設定しています。

目標2030年目標足元の実績
農林水産物・食品の輸出額5兆円1兆7,005億円(2025年)
食品産業の海外展開による収益額3兆円1.6兆円(2022年)
インバウンドによる食関連消費額4.5兆円2.3兆円(2024年)

外食企業にとって注目すべきは2つ目の目標です。輸出拡大実行戦略(2025年5月改訂)によると、この収益額には食品製造業、卸売・小売業とともに外食産業の海外展開による収益が含まれます。戦略は、対外直接投資の収益に加えてロイヤルティ収入を増やすため、中小事業者も含めた外食産業のフランチャイズ展開を後押しするとしています。輸出と海外出店は、国の政策の上では一体で扱われているということです。

3. 農産物・林産物・水産物の内訳

区分2025年の輸出額(億円)
農産物11,008
水産物4,231
林産物735
少額貨物1,031
合計17,005

農産物のうち加工食品は5,725億円(7.2%増)、アルコール飲料は1,495億円(11.8%増)です。輸出の6割以上を農産物が占めており、調味料、酒、菓子などの加工品が大きな比重を持っています。

4. 輸出先の上位と伸び

順位輸出先2025年(億円)前年比2026年1〜7月(億円)前年同期比
1米国2,762+13.7%1,907+18.1%
2香港2,228+0.9%1,261+3.5%
3台湾1,812+6.4%1,033+9.6%
4中国1,799+7.0%1,098+5.3%
5韓国1,094+20.0%
6ベトナム954+10.6%
7タイ735+17.1%
8シンガポール563+1.2%
9ロシア414+439.3%
10オーストラリア382+16.6%
(参考)EU997+16.2%

2026年1〜7月の欄は、農林水産省の月次資料で金額が示されている4か国・地域のみ記載しています。

米国向けは、2025年4月から関税措置が導入されたものの、緑茶や牛肉への旺盛な需要を背景に13.7%増えました。2026年1〜7月も18.1%増と伸びが加速しており、増加の主な品目はぶり、緑茶、ソース混合調味料です。同じ期間に増加額が大きかった国は米国(+292億円)、ベトナム(+153億円)、韓国(+122億円)でした。

5. 品目の動き:伸びたもの、減ったもの

2025年に輸出額の増加が大きかった品目

品目増加額農林水産省が挙げる主な要因
緑茶+357億円欧米・ASEAN向けで、ラテやスイーツの原料になる抹茶を含む粉末状の茶が増加
ホタテ貝+211億円ベトナム向けの加工用冷凍両貝や、現地加工の拡大
ぶり+113億円米国向けで、脂の乗った大型サイズの需要の高まりなどによる単価上昇
牛肉+83億円欧米・アジア向けで既存商流の拡大や新規商流の開拓
ウイスキー+53億円シンガポール向けで認知度の向上
ソース混合調味料+52億円米国・アジア向けで、マヨネーズやごま味・しそ味など様々な調味料の需要

2026年1〜7月の動き

増加額が大きかったのは緑茶(+260億円、主に米国・ドイツ・英国向け)、ぶり(+200億円、米国・韓国・ベトナム向け)、さば(+130億円、ベトナム・エジプト・ナイジェリア向け)です。減少が大きかったのは、うなぎ(活)(▲46億円、台湾向け)、いわし(▲34億円)などでした。

和食店が使う品目の2025年の輸出額

品目2025年(百万円)前年比
牛肉73,105+12.8%
ソース混合調味料72,146+7.8%
ウイスキー48,979+12.2%
日本酒45,879+5.6%
醤油13,493+10.7%
味噌7,142+13.1%
焼酎(泡盛を含む)1,960+13.9%

6. 外食企業・食品事業者はどう読むか

出店先を考えるとき

輸出額が伸びている国は、日本の食材を扱う輸入業者や流通の層が厚くなっている国でもあります。日本と同じ食材で同じ味を出したい外食企業にとって、調達の見通しを立てやすい市場です。ただし輸出額は小売やメーカー向けも含む数字なので、外食の市場規模そのものではありません。海外の日本食レストランの数は、農林水産省の別の調査で2025年に約18万1,000店と推計されており、米国は26,360店、中国は63,500店です。国別の詳しいデータは海外の日本食レストランのデータで解説しています。

メニューと業態を考えるとき

緑茶の輸出の伸びは、抹茶を使ったラテやスイーツの需要によるものと農林水産省は説明しています。カフェ業態や甘味の需要が海外で広がっていることを示すデータとして読めます。ウイスキーや日本酒の伸びは、酒の提案ができる人材の価値を高めます。

人材を考えるとき

日本の食材が届きやすくなるほど、それを使いこなせる料理人の必要性は増します。ぶりやホタテのような水産物の伸びは、魚を目利きしてさばける人材の需要につながります。海外店舗の人材の確保は、食材の調達と同じく、出店計画の早い段階で考える必要があります。海外出店の人材計画外食企業の海外展開と人事体制を参照してください。

7. 使える国の枠組み

輸出拡大実行戦略には、海外で日本食を扱う事業者に関わる施策がいくつか含まれています。

8. 数字を読むときの注意

本記事は一般的な情報であり、貿易・投資に関する助言ではありません。数値は2026年9月22日時点で農林水産省が公表している資料(財務省「貿易統計」をもとに農林水産省作成)から確認したものです。

出典

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