市場データ・制度

海外在留邦人の都市別ランキングと和食店の現地採用

外務省の最新統計(2025年10月1日現在)から在留邦人の多い上位50都市と、国別の長期滞在者・永住者の比率を整理。日本食レストラン数と並べ、和食店が現地で日本人を採用できる余地を読み解きます。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 海外在留邦人の全体像(2025年10月1日現在)
  2. 都市別ランキング上位30
  3. 31〜50位と、増減の大きい都市
  4. 国別:長期滞在者と永住者の比率
  5. 日本食レストラン数と並べてみる
  6. 和食店の現地採用への示唆
  7. データの読み方の注意

日本から料理人を呼ぶ前に、まず現地で日本人を探す。これは海外の和食店の採用で最も費用対効果の高い一手です。すでに現地の就労資格を持つ人を採用できれば、ビザの費用も期間もかかりません。では、どの都市にどれだけの日本人が住んでいるのか。

この記事では、外務省「海外在留邦人数調査統計」(2025年10月1日現在、2025年12月25日公表)から都市別・国別のデータを抜き出し、和食店の現地採用の観点から読み解きます。数値は外務省が公表した資料から転記したもので、推計や加工はしていません(比率の計算を除く)。

1. 海外在留邦人の全体像(2025年10月1日現在)

区分人数前年比
海外在留邦人 総数1,298,170人+0.4%
長期滞在者709,684人(54.7%)−0.4%
永住者588,486人(45.3%)+1.4%

地域別では北米が49万1,701人(37.9%)で、1985年以降一貫して首位です。次いでアジア34万7,333人(26.8%)、西欧21万5,695人(16.6%)、大洋州13万1,707人(10.1%)、南米7万2,264人(5.6%)となっています。

国別の上位10か国は、米国416,380人、オーストラリア105,566人、中国92,928人、カナダ75,316人、タイ72,113人、英国62,270人、ブラジル49,037人、ドイツ44,648人、韓国44,471人、フランス36,023人です。

2. 都市別ランキング上位30

順位都市在留邦人数前年比
1ロサンゼルス都市圏63,972+0.7%
2バンコク51,297+2.3%
3ニューヨーク都市圏38,251+2.4%
4シンガポール33,397+2.6%
5上海31,733−8.5%
6シドニー都市圏31,673+1.5%
7大ロンドン市30,515−3.5%
8バンクーバー都市圏28,090−2.7%
9ホノルル23,254+0.2%
10香港23,228+1.5%
11サンフランシスコ都市圏20,621+1.5%
12メルボルン都市圏19,671−1.0%
13トロント大都市圏18,101−0.3%
14サンノゼ都市圏16,781+2.1%
15ソウル特別市14,496+5.0%
16シアトル都市圏13,788+3.0%
17サンパウロ12,000−6.8%
18ブリスベン都市圏11,672+2.4%
19ゴールドコースト11,148+0.8%
20シカゴ都市圏11,111−6.2%
21オークランド都市圏10,952+4.0%
22パリ10,037−6.7%
23台北9,693+0.1%
24クアラルンプール9,269+5.1%
25ホーチミン9,249−5.0%
26サンディエゴ8,098+0.8%
27パース都市圏7,788+2.0%
28デュッセルドルフ7,010+2.9%
29マニラ首都圏6,513+9.6%
30ハノイ5,853+3.6%

上位30都市のうち、米国が8都市(ロサンゼルス、ニューヨーク、ホノルル、サンフランシスコ、サンノゼ、シアトル、シカゴ、サンディエゴ)、オーストラリアが5都市(シドニー、メルボルン、ブリスベン、ゴールドコースト、パース)を占めます。英語圏の大都市に日本人が集まっている構図がはっきり出ています。

3. 31〜50位と、増減の大きい都市

順位都市在留邦人数前年比
31シーラーチャー5,815+4.4%
32アトランタ都市圏5,613+2.5%
33広州5,571+1.3%
34南ジャカルタ5,419+3.1%
35ポートランド都市圏5,232−4.2%
36ヒューストン5,198+7.8%
37ミュンヘン5,039+1.8%
38北京4,534−7.7%
39ダラス4,458+9.0%
40蘇州4,296−12.7%
41ベルリン4,165+0.4%
42ブエノスアイレス3,972−3.2%
43カルガリー3,913+1.2%
44ノバイ3,860+2.7%
45深圳3,750+0.1%
46ラスベガス都市圏3,691+5.3%
47ドバイ3,433+13.2%
48フランクフルト3,419+6.2%
49ケアンズ3,276+0.2%
50アデレード都市圏3,242−0.1%

増えている都市、減っている都市

上位50都市で前年比の伸びが大きいのは、ドバイ(+13.2%)、マニラ首都圏(+9.6%)、ダラス(+9.0%)、ヒューストン(+7.8%)、フランクフルト(+6.2%)。減少が大きいのは、蘇州(−12.7%)、上海(−8.5%)、北京(−7.7%)、サンパウロ(−6.8%)、パリ(−6.7%)、シカゴ都市圏(−6.2%)です。

中国の主要都市で日本人が減っている動きは、農林水産省の調査で中国の日本食レストランが2023年から2025年に約1万5,000店減ったこととも同じ方向を向いています。

4. 国別:長期滞在者と永住者の比率

現地採用を考えるうえでは、人数と同じくらい「どんな立場の日本人か」が重要です。外務省の統計は、在留邦人を長期滞在者(3か月以上の滞在で永住者ではない人)と永住者に分けています。

総数長期滞在者永住者永住者の比率
ブラジル49,0374,57644,46190.7%
カナダ75,31623,74751,56968.5%
オーストラリア105,56640,48165,08561.7%
米国416,380182,905233,47556.1%
英国62,27032,31529,95548.1%
フランス36,02320,36115,66243.5%
ドイツ44,64825,62219,02642.6%
韓国44,47127,24217,22938.7%
シンガポール33,39728,5494,84814.5%
マレーシア19,69017,9231,7679.0%
中国92,92886,3516,5777.1%
アラブ首長国連邦5,3005,0682324.4%
タイ72,11369,3802,7333.8%
ベトナム16,63616,0865503.3%

(永住者の比率は長期滞在者と永住者の合計に対する割合として計算)

国によって構成がまったく違うことが分かります。北米、オーストラリア、ブラジルは永住者が過半を占め、アジアの多くの国とUAEでは長期滞在者がほとんどです。

5. 日本食レストラン数と並べてみる

農林水産省の調査(2025年)による国別の日本食レストラン数と、在留邦人数を並べると、1店あたりの在留邦人数の違いが見えてきます。

在留邦人数(2025年10月)日本食レストラン数(2025年、概数)1店あたり在留邦人数
カナダ75,3163,080約24.5人
米国416,38026,360約15.8人
タイ72,1135,920約12.2人
ブラジル49,0374,520約10.8人
フランス36,0233,390約10.6人
韓国44,47119,800約2.2人
中国92,92863,500約1.5人

もちろん在留邦人の全員が料理人になりうるわけではなく、この数字は採用可能な人数を示すものではありません。それでも、韓国や中国のように日本食レストランの数に比べて在留邦人が少ない国では、日本人を現地で採用できる余地は小さく、現地の料理人を育てる前提で計画する必要があると読めます。店舗数の詳しい推移は海外の日本食レストラン数データにあります。

6. 和食店の現地採用への示唆

永住者の多い国:まず現地で探す

米国、カナダ、オーストラリアは、在留邦人が多く、しかも永住者の比率が高い国です。永住権を持つ人は、一般に雇用主のスポンサーなしで働けます。ロサンゼルス、ニューヨーク、バンクーバー、シドニーなどでは、日本から呼ぶ前に、現地の日本人向けの求人媒体、日系コミュニティ、専門の求人サイトで募集を一度回す価値があります。

ただし、永住者の多くは長く現地で暮らしている人で、飲食業の経験者とは限りません。調理経験者にどう届くかが課題になります。

長期滞在者が中心の国:就労資格を個別に確認する

タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、中国、UAEでは、在留邦人のほとんどが長期滞在者です。長期滞在者には企業の駐在員とその家族、留学生、ワーキングホリデーの利用者などが含まれ、その国で飲食店に雇用されて働ける資格を持っているかどうかは人によって違います。駐在員の帯同家族が働けるかどうかも国の制度次第です。応募があったら、在留資格と就労の可否を最初に確認してください。

ワーキングホリデーの国:期間を前提に設計する

オーストラリア、カナダ、英国などワーキングホリデー制度のある国では、若い日本人の料理経験者が現地にいる可能性があります。ただし滞在期間に上限があるため、長期の中核人材ではなく、期間限定の戦力として設計するのが現実的です。制度の詳細はワーキングホリデーでの和食人材採用を参照してください。

伸びている都市は競争も増える

ドバイ、マニラ、ダラス、ヒューストンのように日本人が増えている都市は、日本企業の進出や生活の場としての選択が進んでいる可能性があり、和食の需要も伸びやすいと考えられます。一方で、在留邦人の絶対数はまだ少なく、現地での日本人採用だけで厨房を埋めるのは難しいでしょう。現地採用と日本からの採用を組み合わせた計画の立て方は海外出店の人材計画にまとめています。

7. データの読み方の注意

本記事は一般的な情報であり、採用や入管に関する助言ではありません。数値は外務省・農林水産省の公表資料から転記・計算したものです。応募者の就労資格は、必ず個別に確認してください。

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