採用の進め方

日本人と現地スタッフの混成厨房をまとめる方法

日本で修業した料理人と現地スタッフが一緒に働く厨房の運営方法。共通言語の決め方、基準の文書化、指導の仕方、現地法に沿った労働時間、1つのチームにするための習慣を解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 摩擦はどこから生まれるか
  2. 厨房の共通言語を決める
  3. 基準を文書にする
  4. 上下関係と指導の仕方
  5. 労働時間、休日、現地の法律
  6. 2つのチームではなく1つのチームに
  7. オーナー・マネージャーがすべきこと

海外の和食店の多くは、日本で修業した料理人が1人か数人、そして現地採用の調理スタッフ、キッチンハンド、ホールスタッフがその何倍もいる混成チームで運営されています。うまくいけば、日本人料理人が基準を示し、現地スタッフが素早く吸収します。うまくいかなければ、1つの店の中に2つの厨房ができてしまいます。言葉も休憩も別々で、双方に不満がたまっていく状態です。

本記事では、そのどちらになるかを左右する、マネジメント上の実務的な選択を取り上げます。国民性の決めつけは避けています。文化の違いよりも個人の違いのほうが大きいからです。ここで扱うのは、オーナーが実際に向き合うことの多い、修業の仕組みや職場の習慣の違いです。研修プログラムそのものについては現地スタッフへの和食の教え方をご覧ください。

1. 摩擦はどこから生まれるか

混成チームの対立が料理そのものから始まることはあまりありません。始まりは、仕事の教え方、ミスの扱い方、1日の長さについての思い込みの違いです。繰り返し出てくるずれは3つあります。

2. 厨房の共通言語を決める

オーダー、安全に関する声かけ、研修にどの言語を使うかを決め、文書にしてください。海外の混成チームの多くでは、安全に関わることは現地語(多くは英語)で行い、うまく訳せない料理名、切り方、技法には日本語の用語を使う形になります。

採用時にどの程度の語学力を求めるかについては、和食の厨房で求める語学力をご覧ください。

3. 基準を文書にする

混成チームで最も効果の大きい一手は、料理長の頭の中にある知識を、文書と写真の基準に変えることです。現地スタッフの迷いがなくなり、料理人が辞めたときの備えにもなります。

基準は日本人料理人ひとりにではなく、現地のスーパーバイザーと一緒に作ってもらいましょう。料理人が技術を示し、現地のスーパーバイザーが表現が伝わるかを確かめます。2人が先生と生徒ではなく、対等なパートナーとして働くきっかけにもなります。

4. 上下関係と指導の仕方

厨房はどこの国でも上下関係のある職場です。違うのは権限の示し方です。指導の仕方について料理長と合意し、全員にそれを守ってもらいます。

5. 労働時間、休日、現地の法律

日本から来る料理人は、厳しい業界で身についた習慣を持って来るかもしれません。日本の労働基準法自体は、休憩時間を除き週40時間・1日8時間を原則とし(第32条)、労使協定による時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限です(第36条)。厨房が常にそれを守ってきたわけではなく、長時間の無給労働は仕事のうちだと思い込んでいる料理人もいます。

海外で問われるのは、店がある国の法律です。全員の実労働時間を記録し、法律が求める場合は残業代を支払い、契約どおりに休日を与えてください。法令遵守以外にも理由が2つあります。日本人料理人が無給で働くと現地スタッフにも同じことを期待しているように映り反感を招くこと、そして疲れた料理人は辞めていくことです(日本人料理人の定着参照)。

6. 2つのチームではなく1つのチームに

7. オーナー・マネージャーがすべきこと

異文化の問題とされるものの多くは、実は料理長に任せきりにされたマネジメントの問題です。オーナーや総支配人は次のことを行ってください。

  1. 日本から採用した料理人全員に、現地の雇用ルール、職場での行動規範、ハラスメント防止方針を、着任前か着任時に日本語で説明する(日本から来る料理人のオンボーディング参照)。
  2. 料理長に、料理だけでなく人のマネジメントについての研修を受けてもらう。料理の腕で昇進した人が多いためです。
  3. 少なくとも月に1回、現地スタッフと直接話し、日本人料理人とは別に日本語で話す。
  4. 繰り返し起きる対立は、人を替えるだけでなく、仕組み(役割、シフト、指導のルール)を変えるべきサインとして扱う。

混成チームの厨房は、単一文化の厨房より運営が難しいものです。しかし、海外の和食店が層の厚さを築く道でもあります。日本から来た料理人がいずれ離れるときに料理の質を守るのは、彼らが育てた現地のチームです。

本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。日本から採用した人を含め、すべてのスタッフに店舗所在国の雇用法が適用されます。

出典

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