採用の進め方

海外で日本人料理人が辞める理由と定着策

日本・米国・シンガポールの公的統計で飲食業の離職水準を確認し、海外の日本人料理人が辞めやすい理由と、着任前から2年目以降までの定着策を時期別に整理しました。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 飲食業の離職を数字で見る
  2. 海外の日本人料理人が辞める理由
  3. 最初の90日で決まること
  4. 1年目:孤立と期待のずれを防ぐ
  5. 2年目以降:先が見えるか
  6. お金の不満を小さくする仕組み
  7. 辞めるときの設計も先に決める

日本から料理人を呼ぶには、ビザ、渡航、住居と、国内採用とは比べものにならない費用と時間がかかります。それだけに、1年を待たずに辞められると損失は大きく、次の採用までの欠員期間も長くなります。

この記事では、まず公的統計で飲食業の離職の水準を確認し、そのうえで海外の日本人料理人が辞める理由と、時期ごとの定着策を整理します。なお、「海外で働く日本人料理人の離職理由」を調べた公的な統計は見つかりませんでした。理由の部分は、統計ではなく構造から整理したものとして読んでください。

1. 飲食業の離職を数字で見る

日本

厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によれば、2025年1年間の宿泊業・飲食サービス業の離職率は23.7%で、産業計の13.7%を大きく上回りました。パートタイムを除く一般労働者に限っても21.5%(産業計11.4%)で、全産業のなかで最も高い水準です。

米国

米国労働統計局(JOLTS)の年平均の自己都合離職率(quits rate、月あたり)は、宿泊・飲食サービス業で次のとおりです。

宿泊・飲食サービス
20215.8%
20225.8%
20235.0%
20244.1%
20254.2%(全産業2.0%)

シンガポール

シンガポール人材開発省(MOM)の月平均離職率は、飲食サービス業で2022年2.9%、2023年2.6%、2024年2.3%、2025年2.2%(全産業1.2%)。飲食業の内訳では、一般従業員が月2.8%に対して、専門職・管理職は月1.2%です。

この数字から言えること。3か国とも、飲食業の離職率は全産業の1.7〜2.1倍です。一方で、シンガポールの内訳が示すとおり、役割と責任が明確な上位職ほど辞めにくい。日本から呼ぶ料理人を「人手の穴埋め」ではなく「役割のある人」として迎えることが、定着の出発点になります。

もう一つ、日本国内の料理人の働き方を示す数字があります。厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」で、2024年の年次有給休暇の取得率は、宿泊業・飲食サービス業が50.7%と全産業で最も低い値でした(全体66.9%)。日本から来る料理人は、休みが取りにくい職場を経験してきている可能性が高く、海外の店が休みをきちんと取らせることは、それだけで差別化になります。

2. 海外の日本人料理人が辞める理由

公的統計がないため、ここでは国をまたぐ採用の構造から起こりやすい理由を並べます。自店に当てはまるものがないか、点検リストとして使ってください。

  1. 聞いていた話と違う。店の規模、業態、任される仕事、勤務時間、住居。面接で伝えた内容と実態のずれは、最も早く離職につながります。
  2. 生活の立ち上げでつまずく。銀行口座、携帯電話、住居、税や社会保険の登録。仕事を始める前に疲れ切ってしまう。
  3. 孤立。職場に日本語で話せる人がいない、休日に会う人がいない。料理人は労働時間が長く、職場の外で人間関係を作る時間が限られます。
  4. 食材と裁量の不足。和食を作るために呼ばれたのに、必要な食材が入らない、献立に口を出せない。職人としての誇りが傷つきます。
  5. お金の不安。現地の物価上昇、為替の変動で日本への仕送りが目減りする、昇給の見通しがない。
  6. 先が見えない。ビザの更新ができるのか、永住権への道があるのか、何年いればどうなるのかが分からない。
  7. 家族の事情。日本の家族の介護や、帯同した家族の生活への不適応。店側で完全には防げませんが、帰国休暇の設計で緩和できます。

3. 最初の90日で決まること

着任前

着任1〜2週目

30日目・60日目・90日目

オーナーまたは料理長が、30分でよいので1対1で話す時間を必ず取ります。聞くことは3つです。「聞いていた話と違うことはあるか」「困っていることはあるか」「次の1か月で任せてほしいことはあるか」。問題は小さいうちに出てくれば、たいてい解決できます。

4. 1年目:孤立と期待のずれを防ぐ

5. 2年目以降:先が見えるか

2年目に入ると、料理人は「このままここにいて、何年後にどうなるのか」を考え始めます。答えを用意しておく必要があります。

6. お金の不満を小さくする仕組み

給与水準そのものの比較は寿司職人・和食料理人の年収比較を参照してください。

7. 辞めるときの設計も先に決める

どれだけ手を打っても、辞める人は出ます。そのときに店が困らないよう、最初から設計しておくことも定着策の一部です。

離職率の国際比較と採用コストの関係は採用コストの記事で、英語ではRetaining Japanese chefsでも扱っています。

本記事は一般的な情報であり、法務・労務・入管に関する助言ではありません。統計は各機関の公表値をその期間表示とともに引用しています。海外の日本人料理人の離職理由に関する公的統計は見つからなかったため、その部分は統計ではなく実務上の整理として記載しています。

出典

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