アジア・オセアニア

豪州482ビザで日本人調理師を呼ぶ手順と費用

Skills in Demand(482)Core Skillsで日本人料理人を雇うまでの手順を雇用主目線で整理。スポンサー登録、指名、LMTの広告要件、CSIT、SAF、費用の合計まで。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 全体の流れと所要の目安
  2. ステップ1:スポンサー登録
  3. ステップ2:指名(職種と給与)
  4. 労働市場テスト(LMT)の具体的な要件
  5. ステップ3:本人のビザ申請
  6. 費用の一覧(2026年9月時点)
  7. 日本企業・日本人料理人に有利な点
  8. 就労開始後に気をつけること

オーストラリアは、主要国のなかで日本人料理人をもっとも正面から呼びやすい国のひとつです。Chef(ANZSCO 351311)とCook(351411)はいずれもSkills in Demandビザ(サブクラス482)Core Skillsストリームの職業リストに載っており、日本国籍者には技能評価の義務もありません。

ただし、手続きの大半は雇用主側の作業です。本記事では、豪州で和食店を経営するオーナーや、現地法人を持つ日本本社の担当者が「実際に何を、どの順番で、いくらかけてやるのか」を、法令と内務省(Department of Home Affairs)の公式情報に沿って整理します。6か国の比較は調理師の海外就労ビザ比較をご覧ください。

1. 全体の流れと所要の目安

482ビザは、次の3段階を踏みます。スポンサー登録とノミネーションは同時に申請することもできます。

  1. スポンサー登録(Standard Business Sponsor):雇用主が「外国人を雇える事業者」として承認を受ける
  2. 指名(Nomination):特定のポジションと給与、候補者を指名する。労働市場テスト(LMT)の証拠もここで出す
  3. ビザ申請:料理人本人が申請する。経験、英語、健康、人物要件を審査

内務省は482ビザの処理期間を固定値では示しておらず、「最近処理された申請の実績」をツールで公表する形です。採用計画を立てる際は、LMTの広告期間(最低4週間)と書類準備を足して、少なくとも数か月を見込むのが現実的です。

豪州で事業を営む法人・個人事業主が申請します。移民規則(Migration Regulations 1994)第2.63A条により、Standard Business Sponsorとしての承認は承認日から5年間有効です。一度登録すれば、その間は複数の料理人を指名できます。

審査で見られるのは、事業が適法かつ実際に営業していること、そして事業者に不利な情報がないことです。開業直後の店でも申請はできますが、賃貸契約、営業許可、決算やBAS(事業活動報告書)など、営業実態を示す書類を早めに揃えておくと手戻りが減ります。

3. ステップ2:指名(職種と給与)

職種の選び方:ChefかCookか

両方ともCore Skills Occupation List(CSOL)に掲載されていますが、条件(caveat)が2つ付いています。工場での大量生産の職でないこと、そして「limited service restaurant」でないことです。後者にはファストフード、テイクアウト、ファストカジュアル、限定的な食事提供の飲酒店、限定サービスのカフェやピザ店が含まれます。フルサービスの和食レストランであれば該当しませんが、テイクアウト中心のラーメン店や弁当店は職務内容と業態の説明を慎重に組み立てる必要があります。

職務記述書は、実際の仕事と一致させてください。料理長として献立作成、原価管理、スタッフ指導まで担うならChef、調理業務が中心ならCookが自然です。役割の違いは和食厨房の職種解説(英語)も参考になります。

給与:CSITとAMSRの両方を満たす

提示給与は、その職種の年間市場賃金率(AMSR)と、Core Skills Income Threshold(CSIT)の高いほう以上でなければなりません。CSITは2026年7月1日〜2027年6月30日の指名についてA$79,423です(前年度はA$76,515)。住居や車の提供などの非金銭的給付はしきい値に算入されません。

予算の目安として、2026年7月1日改定の業界アワード(最低賃金)ではCook grade 5が週A$1,221.10、年換算で約A$63,500です。CSITはこれより年A$1.6万ほど高く、「アワード通りの給与で呼べる」わけではありません。既存の現地スタッフとの給与バランスも含めて、指名前に決めておく必要があります。

4. 労働市場テスト(LMT)の具体的な要件

LMTは、豪州国内で人材を探したことを示す手続きです。要件は移民法第140GBA条と、それに基づく告示LIN 18/036(2024年12月7日時点の編纂版)に定められています。

項目要件
実施期間指名申請を提出する日から遡って4か月以内
広告の数と媒体2本以上。全国規模の求人サイト、全国紙等の印刷媒体、全国ラジオのいずれか(認定スポンサーは自社サイトも可)
言語英語
記載事項職名または職務内容、必要な技能・経験、スポンサー名(人材会社経由なら人材会社名)、年収がA$96,400未満の場合は給与額
掲載期間応募を4週間以上受け付けること。複数の広告を重ねて連続4週間とすることも可
提出する証拠使用した広告のコピー

実務上の注意は2つあります。第一に、CSITを満たす給与はほぼ確実にA$96,400を下回るため、和食店の料理人募集では広告に給与額の記載が必要になるケースが大半です。第二に、4か月の起算点は「指名申請の提出日」です。広告を出してから候補者との条件交渉に時間をかけすぎると、LMTをやり直すことになります。

LMTが「書面の説明」で足りる場合

同じ告示は、一部のポジションを「select position」とし、広告の代わりに、なぜ国内で適任者が見つからないかを説明する書面の提出で足りるとしています。和食店に関係しそうなのは次の3つです。

また、日豪経済連携協定(JAEPA)は、LMTに関わる国際貿易上の義務として告示LIN 21/075(2025年10月1日編纂版)に列挙されています。どのような場合にLMTが免除されるかは申請の類型によって異なるため、適用の可否は申請前に確認してください。

5. ステップ3:本人のビザ申請

滞在は最長4年で、家族(配偶者・子)の同伴が可能です。条件を満たせば雇用主指名の永住ビザ(サブクラス186)へ進む道もあります。英文の職歴証明書は、在籍期間、雇用形態、週の労働時間、担当業務を具体的に書いたものを前職の店から取り寄せてください。「和食調理に従事」だけでは経験の中身が伝わりません。

6. 費用の一覧(2026年9月時点)

項目金額負担者
スポンサー登録A$420雇用主
指名A$330雇用主
Skilling Australians Fund(SAF)賦課金年商A$1,000万未満:A$1,200/年
それ以上:A$1,800/年
雇用主(本人への転嫁禁止)
ビザ申請料(本人・18歳以上の家族)A$4,015/人本人または雇用主
ビザ申請料(18歳未満の家族)A$1,005/人同上
その他英語試験、健康診断、警察証明、翻訳など

ビザ申請料は2026年7月1日に引き上げられた額です(KPMG等の報告による。内務省の料金は公式サイトの料金試算ツールで最終確認してください)。例えば年商A$1,000万未満の店が4年で指名すると、スポンサー登録・指名・SAFの合計はA$5,550です。

内務省は、スポンサー登録、指名、SAFに関わる費用をビザ保持者や家族に転嫁できないと明記しています。給与からの天引きも含め、ビザと引き換えに本人から利益を受け取ることは違法です。本人が雇用開始前に辞退した場合や、12か月以内に退職した場合など、限られた条件でSAFの一部が返金されます。採用全体の費用感は海外での和食人材の採用コストにまとめています。

7. 日本企業・日本人料理人に有利な点

  1. 技能評価が不要:TRA評価の義務がないため、評価待ちの期間と費用を丸ごと省けます。
  2. グループ内異動はLMTの負担が軽い:日本本社や日本の店舗で雇用している料理人を、豪州の関連会社が指名する場合は「select position」に当たる可能性があります。多店舗展開の企業は、この経路をまず検討する価値があります。
  3. 日本の実務経験がそのまま使える:求められるのは指名職種に関連する1年以上の経験です。調理師学校の卒業証明や調理師免許は、経験を裏づける資料として添付できます。

8. 就労開始後に気をつけること

ビザの見通しが立ったら、住居の手配と到着後の立ち上がりも準備しておくと定着率が変わります。海外で働く料理人の住まいと渡航準備料理人の定着施策もあわせてご覧ください。ワーキングホリデー中の人材を雇う場合の制限はワーホリ人材の採用ガイドで扱っています。

本記事は2026年9月22日時点で豪州政府の公式情報と法令を確認して作成した一般情報であり、法務・移民に関する助言ではありません。金額やしきい値は毎年7月に改定されます。個別の案件は登録移民エージェント(MARA)や弁護士にご相談ください。

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