北米

カナダLMIAで日本人料理人を雇う実務とワーホリ活用

カナダで日本人料理人を雇う際のLMIA実務を整理。高賃金・低賃金の分かれ目となる州別基準時給、広告要件、C$1,000の手数料、主要都市で低賃金LMIAが止まっている現状、IECワーホリの使い方まで。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. LMIAの基本:分かれ目は職種ではなく時給
  2. 州別の基準時給と年収換算
  3. 高賃金ストリームの実務
  4. 低賃金ストリームが難しい理由
  5. 雇用主が負担する費用と義務
  6. ワーキングホリデー(IEC)の活用
  7. 採用計画の組み立て方

カナダで日本人料理人を正規に雇う場合、多くはLMIA(Labour Market Impact Assessment、労働市場影響評価)を経由します。LMIAは雇用主が連邦政府(ESDC)に申請し、「国内で人材を確保できず、外国人を雇っても国内の労働市場に悪影響がない」ことを示す手続きです。肯定的な結果が出てはじめて、料理人本人が就労許可を申請できます。

本記事は、カナダで和食店を経営するオーナーや日本本社の担当者向けに、LMIAの実務(賃金区分、広告、手数料、義務)と、ワーキングホリデー(International Experience Canada、IEC)人材の使い方をまとめたものです。内容はカナダ政府の公式ページを2026年9月に確認しています。

1. LMIAの基本:分かれ目は職種ではなく時給

職業分類NOC 2021では、Chefsが62200(TEER 2)、Cooksが63200(TEER 3)です。LMIAの審査がどちらのルールで進むかは、この職業コードではなく提示する時給で決まります。

基準時給は州の中位時給に20%を上乗せした水準で、定期的に改定されます。後述のとおり、大都市の和食店にとって低賃金ストリームは2026年9月時点で事実上使えないため、最初に決めるべきは「基準時給を超える条件を出せるか」です。

2. 州別の基準時給と年収換算

2026年7月17日発効の基準から、和食店の多い州を抜き出しました(全州の一覧は調理師の海外就労ビザ比較に掲載)。年収は週40時間・52週で単純換算した参考値です。

基準時給(C$)年収換算(参考)
ブリティッシュコロンビア38.40約C$79,900
アルバータ37.50約C$78,000
オンタリオ36.92約C$76,800
ケベック36.00約C$74,900
サスカチュワン34.62約C$72,000
マニトバ31.33約C$65,200

時給には、保証された賃金のみが含まれます。残業代、チップ、賞与、歩合は算入されません。チップ込みで「実質的には高い」という説明は、審査上は使えないと考えてください。

3. 高賃金ストリームの実務

募集活動(申請前に必須)

申請前に、少なくとも3種類の募集活動を行います。

  1. Job Bank(連邦政府の求人サイト)への掲載。Job Match機能を使い、掲載後30日以内に4つ星以上の候補者全員に応募を促す
  2. 追加の募集方法を2つ以上。うち1つは全国規模で、どの州の住民もアクセスできるもの
  3. 広告は、申請前3か月以内連続4週間以上掲載すること

広告には、会社名、所在地、職名、職務内容、雇用条件、使用言語、賃金(昇給や賞与を含む)、福利厚生、勤務地、連絡先、必要な技能を載せます。広告に書いた条件と申請書の条件がずれると、審査で説明を求められます。求人文の書き方は海外向け求人票の書き方も参考にしてください。

移行計画(Transition Plan)

高賃金ストリームでは、カナダ人・永住者の採用、定着、育成を進めて外国人労働者への依存を減らすための「移行計画」の提出が必要です。和食店であれば、現地スタッフへの技術研修、見習いポジションの新設、地元の調理学校との連携などが具体策になります。計画は雇用期間を通じて有効で、後から実施状況を確認されることがあります。

期間と州ごとの追加手続き

雇用期間は最長3年まで要求でき、開始予定日の6か月前から申請できます。ブリティッシュコロンビア、マニトバ、サスカチュワン、ノバスコシアでは州の登録証明が、ケベックでは州への同時申請が必要です。

4. 低賃金ストリームが難しい理由

基準時給に届かない場合の低賃金ストリームには、2026年9月時点で次の制限があります。

なお、2026年4月1日〜2027年3月31日の臨時措置として、参加する州の都市圏外(農村部)では上限が15%に引き上げられています。マニトバ、ニューブランズウィック、ノバスコシア、ケベックが参加を表明し、アルバータ、オンタリオ、ヌナブトは不参加です。

トロントやバンクーバーの和食店にとって、選択肢は実質的に「州の基準時給以上を出して高賃金ストリームで申請する」か「LMIAが不要な人材(ワーホリ、配偶者の就労許可保持者、永住者など)を採用する」かの2つです。

5. 雇用主が負担する費用と義務

項目内容
LMIA処理手数料1ポジションあたりC$1,000。取り下げや却下でも返金なし。労働者から回収することは禁止
賃金Job Bankの中位賃金と、同じ職場で同じ仕事をする従業員の賃金のうち高いほう(prevailing wage)。上昇した場合は外国人労働者の賃金も更新
医療保険州の医療保険が適用されない期間は、緊急医療をカバーする民間保険を雇用主負担で加入
労災保険州の労災保険でカバーすること(費用の転嫁は禁止)
雇用契約勤務初日までに署名済みの雇用契約書を渡す(英語または仏語)
職務採用した職種に対応する業務のみ

LMIAが出た後、本人の就労許可申請の費用や、渡航費・住居費の扱いは契約で明確にしておきます。採用費用全体の考え方は海外での和食人材の採用コストをご覧ください。

6. ワーキングホリデー(IEC)の活用

日本国籍者が参加できるIECのカテゴリーはワーキングホリデーのみです。

保健、保育、教育、高齢者介護の仕事には健康診断が必要ですが、飲食店の調理職は該当しません。参加回数について、外務省は2024年12月1日からカナダは生涯2回参加可能になったと案内しています。採用時には本人の就労許可証の有効期限と条件を必ず確認してください。

和食店での使い方

ワーホリ人材の雇用については、豪州・英国・NZとの比較をワーキングホリデー人材の採用ガイドにまとめています。

7. 採用計画の組み立て方

  1. 賃金を先に決める:州の基準時給以上を出せるかで、使えるルートがほぼ決まります。
  2. 募集を「広告要件を満たす形」で出す:国内向けのJob Bank掲載と全国規模の媒体を最初から組み込み、日本からの候補者探しと並行させます。
  3. 移行計画を実行可能な内容にする:現地スタッフの育成は審査対策であると同時に、店の人手不足への備えでもあります。和食人材の育成制度も参考になります。
  4. 四半期ごとに都市圏リストを確認する:低賃金ストリームの可否は3か月ごとに変わります。

本記事は2026年9月22日時点でカナダ政府の公式情報を確認して作成した一般情報であり、法務・移民に関する助言ではありません。基準時給や対象都市圏は定期的に改定されます。個別の案件はカナダの登録移民コンサルタント(RCIC)または弁護士にご相談ください。

出典

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