北米

ニューヨーク出店の人材確保:出店形態とビザ

ニューヨーク出店では、会社の出資関係がE-2・L-1の可否を決めます。出店形態ごとのビザの選択肢、現地採用との組み合わせ、給与水準と求人ルールを出店計画の順に整理しました。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. ニューヨークの数字
  2. 出店の形がビザの選択肢を決める
  3. 経路ごとの向き・不向き
  4. 現地採用の考え方
  5. 給与水準と求人のルール
  6. 出店スケジュールへの落とし込み
  7. チェックリスト

ニューヨークへの出店で人の問題を考えるとき、最初に決めるべきなのは「誰を日本から連れていくか」よりも「どういう会社の形で出るか」です。米国には料理人専用の就労ビザがなく、日本の外食企業が使う主な経路であるE-2ビザとL-1ビザは、どちらも会社の出資関係や社内での雇用歴が前提になっています。つまり、法人の作り方を決めた時点で、使えるビザの経路もかなり決まってしまいます。

この記事は、日本の外食企業やオーナーがニューヨークに出店する場面を想定し、出店計画の順序に沿って人材確保を整理します。ニューヨークでの採用実務(求人広告、衛生資格、現地の候補者の探し方)は英語記事Hiring a sushi chef in New Yorkで詳しく扱っています。

1. ニューヨークの数字

項目数字出典・時点
ニューヨーク都市圏の在留邦人38,251人(都市別で3位)外務省、2025年10月1日
米国の在留邦人416,380人(うち永住者233,475人、56.1%)外務省、2025年10月1日
米国の日本食レストラン約26,360店(2023年比+320店)農林水産省、2025年
ニューヨーク都市圏のChefs and Head Cooksの年収下位10%:46,530ドル/中央値:71,780ドル/上位10%:120,370ドル米労働統計局(O*NET経由)、2025年5月

農林水産省の調査は国・地域別で、ニューヨークだけの日本食レストラン数は示されていません。それでも、日本人が多く住み、和食店の層が厚い都市であることは確かです。同じ候補者を多くの店が取り合う市場だと考えてください。

2. 出店の形がビザの選択肢を決める

日本の外食企業がニューヨークに出る形は、大きく3つに分けられます。

出店の形主に検討するビザ前提になること
日本本社が出資する米国子会社E-2(条約投資家)、L-1(企業内転勤)E-2は米国の事業の50%以上を日本の国民が所有していること。L-1は日本側のグループ会社での雇用歴
現地パートナーとの合弁出資比率しだいでE-2、L-1日本側の持分が50%未満になるとE-2の前提が崩れる
フランチャイズ(現地企業に加盟店として出店してもらう)加盟店側の会社の条件で判断ビザの前提は加盟店側の出資関係や雇用歴で判断される

E-2の対象になるのは、日米の通商航海条約(1953年10月30日発効)にもとづき、米国の事業の50%以上を条約国(日本)の国民が所有している場合です。その会社で働く従業員もE-2を取れますが、会社と同じ国籍(日本国籍)であること、そして監督・経営の立場にあるか、事業の運営に不可欠な専門技能を持っていることが条件です。日本国籍者のE-2ビザは有効期間60か月で、互恵手数料はかかりません(申請料は315ドル)。

合弁で出るときは、持分の設計がそのまま「日本から料理長を呼べるかどうか」に影響します。資本政策を決める会議に、人の計画を持ち込んでください。

3. 経路ごとの向き・不向き

E-2:日本資本の店で日本人料理人を雇う基本の経路

日本資本の米国法人であれば、社外から採用した日本人料理人にも使える可能性があります。料理長や、店の味を支える職人は「事業に不可欠な専門技能」として説明することになります。詳しくはE-2ビザで和食店の料理人を呼ぶをご覧ください。

L-1:社内の料理人を送る経路

L-1は、申請の直前3年間のうちに継続して1年以上、海外のグループ会社でフルタイムで働いていた人が対象です。職務は管理職・役員(L-1A)か、専門知識(L-1B)が必要な仕事でなければなりません。規則では専門知識を「その組織の製品、サービス、技術、経営などについての特別な知識、または組織の手順についての高度な知識」と定めています。日本の店で長く働いた料理長がこれに当たるかは、個別の判断になります。

出店計画で特に注意したいのは、新しい事業所(new office)を立ち上げるためのL-1です。規則上、事業所の物理的なスペースを確保済みであることの証明が必要で、承認期間は最長1年です。その後の延長には、実際に事業を行っていることを示す必要があります。物件契約の前にL-1を申請することはできない、ということです。

O-1:実績のある料理人

料理の分野で卓越した実績(受賞歴や、6つの基準のうち3つ以上)を示せる料理人向けです。期間は最長3年で、年間の上限はありません。店の看板になる料理人には選択肢になりますが、誰でも使える経路ではありません。O-1ビザと料理人で詳しく説明しています。

H-2BとEB-3:出店の常勤ポストには合わない

H-2Bは一時的な需要(原則1年以内)が前提で、通年営業の店の常勤ポストには使えません。EB-3(永住権)は、2026年9月のビザ・ブレティンでSkilled Workersの最終処理日が2024年9月1日となっており、開業に間に合わせる経路ではありません。

4. 現地採用の考え方

米国の在留邦人の56.1%は永住者で、ビザのスポンサーなしで働ける人が一定数いると考えられます。ホール責任者、副料理長、日本語のできるマネージャーは、まず現地で探す価値があります。

ここで押さえておきたいのは、E-2で働けるのは日本国籍の従業員だけだという点です。日本人以外のスタッフは、就労資格を持つ現地の人から採用することになります。開業時の厨房とホールは、「E-2またはL-1で来る日本人の核」と「現地採用のチーム」の組み合わせで設計してください。組み合わせ方の型は海外出店の人材計画にまとめています。

5. 給与水準と求人のルール

日本の給与体系をそのまま持ち込むと、現地採用のスタッフと日本から来た料理人の間で不公平感が生まれやすくなります。職務ごとの給与レンジを、開業前に決めておくことをおすすめします。

6. 出店スケジュールへの落とし込み

段階人材面で決めること
出店形態の検討出資比率(E-2の50%要件)、日本から送る社員のグループ内での雇用歴(L-1の1年要件)の確認
法人設立・出資移民弁護士の選任。E-2で呼ぶ人とL-1で送る人の振り分け
物件確保L-1(新規事業所)の申請が可能になる。E-2の申請書類の準備
開業前現地での求人(給与範囲の記載)、衛生資格の手配、日本から来る人の住居
開業後1年新規事業所のL-1は延長時に事業の実態を示す必要がある

各ビザの審査期間は時期や案件で変わるため、この記事では期間を示していません。現地の移民弁護士に、自社の条件での見込みを確認してください。

7. チェックリスト

本記事は一般的な情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。ビザの要件は2026年9月時点で確認したもので、個別の案件の可否や審査期間は米国の移民弁護士にご確認ください。

出典

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