採用の進め方

2店舗目の人員計画:異動・欠員補充・日程

1号店を弱らせずに2店舗目を人員面で準備する方法。書き込み式の人員マトリクス、20週間のスケジュールと短縮版、補充コストの考え方、1号店の守り方をまとめました。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

2店舗目の人員計画は、1店舗目とはまったく別の課題です。すでに動いているチームがあるからこそ、異動させる人を誤ると、開店資金を稼いでいる1号店の方が弱ってしまいます。誰が異動し、誰が昇格し、誰が欠員を埋めるかを人員マトリクスに書き出し、ビザが絡む職種があるかによって16週間から20週間前には募集を始め、開店を決める前に1号店が異動者抜きで1週間通常営業できるかをテストしてください。1号店は、異動しないリーダーを明確にする、昇格者の給与を上げる、フードコストとクレームを毎週確認する、という3点で守ります。

このページは、和食レストランの2店舗目の人員計画を立てるオーナーやグループの人事担当者向けです。誰が異動し誰が欠員を埋めるか、書き込み式の人員マトリクス、採用の日程、そして2号店が開店する間に1号店をどう守るかを扱います。海外での最初の出店であれば、まず出店前の人員計画をご覧ください。この計画が前提とする「厨房を1人で任せられる二番手」の育て方は、和食厨房の後継者育成で扱っており、ここでは繰り返しません。

目次

  1. なぜ2店舗目は1店舗目より人員面で難しいか
  2. チームを分けるか、新しく作るか
  3. 2店舗分の人員マトリクス(白紙版と記入例)
  4. 20週間のスケジュールと、短縮時に削るもの
  5. 1号店を守る
  6. ビザ保有スタッフの異動
  7. 開店後3か月の流れ

1. なぜ2店舗目は1店舗目より人員面で難しいか

1店舗目を開いたとき、オーナーや料理長は毎営業日そこにいました。基準は1人の目で保たれていたのです。2店舗になると、その人はどちらか一方にしかいられません。よくある失敗は3つです。

いずれも計画の問題であり、契約書にサインする前に、紙の上で解決できることばかりです。

2. チームを分けるか、新しく作るか

基本の型は2つあります。多くのグループは、その中間に落ち着きます。

分割(種まき)型新チーム型
やり方1号店の経験者を核として2号店に移し、1号店は新規採用で埋める2号店はほぼ新規採用とし、1号店から1〜2人だけリーダーを送る
強み基準と文化が人と一緒に移る1号店がそのまま維持される
リスク新スタッフが慣れるまで1号店が弱くなる2号店が、一緒に働いたことのないチームで開店する
向いている場合1号店に、すぐ引き継げる二番手がいる1号店が、動かせない少数の人材に依存している

使える原則があります。どの厨房からも、上位3人のうち2人以上を同時に動かさない。料理長が動くなら副料理長は残す。副料理長が2号店のリーダーとして動くなら、料理長は1号店に残り、社内から昇格させます。

判断は結局、1つの問いに行き着きます。1号店に、明日からでもその厨房を任せられる二番手がいるか。答えが「いない」なら、それはこのスケジュールが吸収できる話ではなく、先に別プロジェクトとして片付けるべきことです。二番手の育て方をご覧ください。

3. 2店舗分の人員マトリクス(白紙版と記入例)

計画は表にして書きます。行に職種、列に店舗と時期を並べ、各マスに実名か「採用予定」を入れます。まず下の白紙版を自分の店の名前で埋めてから、他のことを決めてください。頭の中にある計画より、目に見える表の方がずっと役に立ちます。空白がひと目でわかるからです。

職種1号店・現在1号店・開店後2号店・開店時採用元
エグゼクティブ/グループシェフ    
料理長/板前    
副料理長/カウンター二番手    
上級調理師    
調理師・仕込み    
キッチンポーター    
フロアマネージャー    

同じ表を、似た業態の2号店を開く寿司カウングループの例で埋めると、次のようになります。マスの埋まり方の参考にしてください。

職種1号店・現在1号店・開店後2号店・開店時採用元
エグゼクティブ/グループシェフ(なし)1号店の料理長が昇格し、両店を兼務社内
料理長/板前AB(副料理長から昇格)A、最初の8〜12週間社内
副料理長/カウンター二番手B採用予定C(上級調理師から昇格)1号店分は外部採用
上級調理師C、DD採用予定外部採用
調理師・仕込みE、F、GE、F+新規1名G+新規2名外部採用
キッチンポーターHH採用予定外部採用
フロアマネージャーII採用予定、1号店で研修外部採用

この表からわかることが2つあります。1つは、昇格のたびに下の職種に欠員ができ、実際に採用が必要なのはその欠員だということです。「採用予定」のマス数を数えれば、それが本当の採用ボリュームで、昇格が連鎖する分、オーナーが思うより多くなりがちです。もう1つは、開店前に1号店で研修を受けた新規採用は、開店当日にいきなり来る2人分の価値があるということです。

4. 20週間のスケジュールと、短縮時に削るもの

これは、就労資格をすでに持つ現地採用を前提にしています。日本からビザで呼び寄せる職種があれば、その職種だけは20週よりずっと早く動き出す必要があります。国ごとのリードタイムは海外新規出店の人員計画をご覧ください。

開店前の週数人事タスク
20週人員マトリクスを作成。分割型か新チーム型かを決める。異動・昇格の対象者には、個別に、書面で伝える。
16週1号店の欠員募集を開始。副料理長と上級調理師のポジションから。育成期間が最も長くかかる。
12週1号店の欠員補充の最初の採用が着任。将来の2号店リーダーは1号店の業務の引き継ぎを開始。
10週2号店の調理師・仕込み・フロアの職種を募集。
8週2号店採用者が1号店で実際の営業を通じた研修を開始。レシピ、仕込みリスト、ステーションガイドが誰かの頭の中にしかないなら、書き出す。
4週両店舗の最終シフトを確定。異動者抜きで1号店が1週間通常営業できるかをテスト。
2週2号店チームが搬入・準備、身内向けの試験営業を開始。
0週開店。1号店のカバー要員として、経験者を1人待機させておく。

20週間という数字を決めているのは3つの要因で、それぞれがランウェイを短くしたときに何を諦めることになるかを教えてくれます。

ランウェイが20週ではなく12週しかない場合、真っ先に諦めるのは4週目のテストであって、予告期間やビザ上の下限ではありません。短縮版の計画は次のようになります。

開店前の週数12週ランウェイでの変更点
12週マトリクス作成と募集開始を同じ週に行う。誰にも伝える前の、静かに計画できる2週間はなくなる。
10週〜6週欠員補充と2号店採用を、順番にではなく並行して進める。両方を同時に募集するため、各職種の応募プールは小さくなると見込む。
4週〜2週実際の営業を通じた研修は約4週間に短縮。1号店の新チームは最初の1か月、フル基準を下回ることを前提に、料理長と常連客には事前に伝えておく。
0週異動者抜きの1週間フルテストは行わない。代わりに、都合のつく最も忙しい夜に1営業だけフルで回し、うまくいかない点は「修正の時間がある発見」ではなく「その場で直す問題」として扱う。

可能な限り、4週目のテストは計画全体の中で最も価値のある1行です。異動者抜きで1号店が1週間の通常営業を回せなければ、開店当日ではなく、まだ直せるうちに気づけます。

5. 1号店を守る

1号店を守ることこそ、この計画全体の本当の目的なので、注意喚起だけでは足りません。開店前に数字にしておくべきことが3つあります。

職種ごとの補充コスト。国をまたいで使える公式な数字は見つかりませんでした。市場・採用チャネル・職種によって変わるためです。見出しの数字を推測するのではなく、総額として組み立ててください。求人・エージェント費用に、欠員期間中に人手不足やシフト調整でかかる分、そして上級者が面接と研修に割く時間を足します。日本から採用する場合は、日本の人材紹介手数料が参考になります。厚生労働省の令和6年度職業紹介事業報告によると、常用就職1件あたりの平均手数料は約103万円で、上限制手数料表では6か月分の賃金の10.8%が法定上限です。これは総額の中の1項目として使い、それ自体を総額と見なさないでください。

外部採用の上級調理師のならし期間。経験豊富な人材であっても、外部から採用した上級調理師が自店のメニュー・仕入先・パスに慣れるには時間がかかります。目安として、及第点に達するまで4〜6週間、常連客が変化に気づかないレベルに達するまで10〜12週間を見込んでください。この「ならし」期間を補充採用者の着任日に織り込みます。異動者が抜ける週に合わせて着任させると、ならし期間の間ずっと人手不足で回すことになります。

開店後12週間、1号店で確認すること。頭の中の記憶ではなく、週次のログにしてください。

あと2点、さらりと流さず、はっきり述べておきます。昇格には賃金で応えること。「本当の」料理長が2号店を開ける間、1号店で料理長を務める副料理長はより大きな仕事をこなしており、給与と肩書きが変わらなければ、一番困るタイミングで辞められるリスクを負います。1号店のメニューは同じ四半期には変えないこと。新しいチームは、すでに知っている料理を作るべきで、リーダー不足のさなかに新メニューを立ち上げるべきではありません。

プロジェクト期間中に誰かが辞めることも織り込んでください。飲食業の離職率は、当サイトが扱う主要な市場のどこでも全産業平均を大きく上回ります。20人規模のグループが2店舗を運営するこの規模のプロジェクトでは、期間中に少なくとも1人の離職を見込んでください。各採用ラウンドで惜しくも通らなかった候補者を1〜2人、ポジションが埋まった時点で選考を打ち切らずに温めておくとよいでしょう。

6. ビザ保有スタッフの異動

チームの誰かが自社スポンサーの就労ビザや許可を持っている場合は、計画に組み込む前に条件を確認してください。国と制度によっては、許可が特定の雇用主・職種名・給与水準・勤務地に紐づいており、これらを変えると新規申請や当局への届出が必要になることがあります。レストランごとに別法人で運営しているグループもあり、その場合は許可に記載された雇用主が誰かが重要になります。

国ごとのルールは、内容が大きく異なり頻繁に変わるため、ここには一覧にしていません。オーストラリアやカナダなど、当サイトの国別ガイドから公式情報源をたどってください。判断に迷う場合は、本人に異動を伝える前に、入管当局か専門家に確認してください。

7. 開店後3か月の流れ

3か月が終わったら、その時点での状況で人員マトリクスを書き直してください。3店舗目を計画しているなら、その表にある空欄が次の採用リストになります。

変わる数字:日本の人材紹介手数料の平均額(厚生労働省が前年度分を毎年春に公表)と、各市場の飲食業離職率(現在の数値と出典は離職率ガイドを参照)。ビザのリードタイムと現地の最低募集期間は国ごとに定められており、国別ガイドで確認しています。次回確認は、厚生労働省の次回「職業紹介事業報告」公表に合わせて2027年春の予定です。

よくある質問

2店舗目の人員計画には何週間必要ですか。

現地採用なら20週間が現実的なランウェイです。退職予告期間、実際の営業を通じた研修、そして国によっては就労許可申請前の最低募集期間が、その下限を決めています。日本からビザで呼び寄せる職種があれば、さらに長く必要です。日程を決める前に国別ガイドでリードタイムを確認してください。

優秀な人材を新店に移すべきですか、それとも新チームを採用すべきですか。

多くのグループは両方を行います。実績のあるリーダーを1〜2人だけ新店に送って基準の「種」にし、残りは新規採用にすることで、1号店から上位3人がまとめて抜けるのを避けます。どちらの比率が正しいかは、1号店に明日から任せられる二番手がすでにいるかどうかで決まります。

新店に異動させる調理師の補充にはいくらかかりますか。

市場とチャネルによって変わるため、単一の公式数字はありません。求人・エージェント費用、欠員期間の人手不足コスト、上級者が補充採用者の研修に割く時間を自分で合算してください。日本から採用する場合、厚生労働省の統計にある人材紹介手数料の平均額、約103万円が参考の1つになります。

新しい上級調理師が自店の基準に達するまでどれくらいかかりますか。

メニューと仕入先に慣れて及第点に達するまで4〜6週間、常連客が違いに気づかなくなるまで10〜12週間を見込んでください。補充採用者の着任日は、異動者が抜ける日ではなく、この「ならし」期間を基準に組んでください。

賃貸契約の開始まで12週間しかない場合はどうすればよいですか。

欠員補充と2号店採用を順番ではなく並行で進め、実際の営業を通じた研修を約4週間に短縮し、異動者抜きの1週間フルテストの代わりに最も忙しい夜の1営業だけをテストにしてください。退職予告期間やビザ上の募集期間の下限は縮められないので、残ったスケジュールの中で真っ先に確保してください。

一般的な情報であり、法律や出入国管理の助言ではありません。就労許可の条件は国と制度によって異なります。スポンサー対象スタッフを職種・法人・勤務地の間で異動させる前に、公式ルールを確認してください。

出典

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