職種別の採用

海外の日本料理店の総支配人(GM)を採用する

海外の日本料理店のGMが担うことと評価シート、2つの候補者像と見極め方、公的な給与データ、2つの賞与設計、採用コストとスケジュール、法的責任、市場別のビザの注意点を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

海外の日本料理店の総支配人(GM)は、売上予算比、人件費率、原価の理論値比、定着率、厨房とホールが一体で回っているかという5点で評価されます。給与は米国の飲食店マネージャーの中央値である年収$69,390(BLS、2025年5月)を起点にし、日本の本社や日本人料理長との橋渡しも担う場合はそこに上乗せします。この組み合わせを示す公的な数字はどこにもないためです。求人開始から着任まで8〜10週間を見込んでください。

この記事は、海外の日本料理店のオーナーや日本の本社が総支配人を採用する際の、仕事の範囲、評価指標、見極め方、給与の決め方、ビザの注意点を扱います。厨房のオペレーションを担う職種はキッチンマネージャーの職務記述書で扱っており、GMはその役割ではありません。肩書と給与を伴わずに兼務させないでください。食品衛生資格の国別要件は国別の食品衛生資格、酒類提供の規則はホールスタッフの採用をご覧ください。

目次

  1. GMが担うことと評価シート
  2. 2つのタイプ:現地の運営者と「橋渡し役」
  3. 見極め方の設計
  4. 給与:公的な数字と提示額の決め方
  5. 2つの賞与設計の実例
  6. 採用コストと採用スケジュール
  7. 食品衛生と酒類提供の責任者は誰か
  8. 市場別のビザの注意点

1. GMが担うことと評価シート

海外の日本料理店のGMは、言葉も前提も共有していないことが多い3つのグループの間に立ちます。オーナーや日本の本社、日本人料理長が率いる厨房、そして現地のホールスタッフとお客様です。GM採用の失敗の多くは、オーナーがこのうち一つの関係だけを見て採用したことが原因です。評価シートは、最初の面談を始める前に、着任後ではなく先に書いてください。

評価する成果測り方見直しの頻度
売上予算比週次の実績を予算と比較し、毎週更新週次、月次でまとめて確認
人件費率実際の支払い時間を売上に対する目標比率と比較週次
原価の理論値比実際の原価とメニューが本来出すべき原価を比較月次、料理長と一緒に
定着率ホールと厨房それぞれの、望まない離職。90日時点と年間四半期
厨房とホールの連携時間や連絡の不備に起因するお客様からの苦情。90日時点での料理長自身の評価90日レビュー、以降は年次

最初の面接の前に、報告先、料理長がGMに報告するのか、それともオーナーに直接の系統を持つのか、メニューの原価をめぐって意見が割れたときに最終的にどちらが決めるのかを、文書で決めておいてください。多くの日本料理店では、肩書が示す以上に料理長のほうが実際の権限を持っています。それと争うGMはうまくいかず、厨房を無視するGMもうまくいきません。「最初の30日で料理長と決定権の分担を合意する」を、シフトの確認、すべての取引先との面談、変更を加える前に週末の営業を1回通しで見ることと並べて、GM自身の最初の90日リストに入れてください。

2. 2つのタイプ:現地の運営者と「橋渡し役」

現地の運営者橋渡し役
典型的な経歴現地のレストラングループやホテルのGM、副GM日系レストラングループの店長。バイリンガルが多く、日本から出向していることもある
強み現地の労働法、許認可、取引先、採用市場、お客様の期待を知っているコンセプト、料理長の基準、本社への報告の仕方を理解し、日本人スタッフから信頼される
リスク料理長をほかの部門長と同じように扱うことがある。和食の細部を薄めてしまうことがある現地の雇用規則を知らないことがある。現地チームの管理や採用に苦労することがある
向いている店すでに強い料理長がいる、現地資本の大型店日本企業が所有する店、または料理長の英語力が限られている店

両方を備えた人が見つからなければ、一方をGMに、もう一方をナンバー2に採用します。よくある組み合わせは、現地出身のGMに、厨房と本社との関係を担うバイリンガルの副店長をつける形です。ホールの職種についてはホールスタッフの採用を、混成チームの運営については異文化の厨房マネジメントをご覧ください。

3. 見極め方の設計

4つのパートを行い、それぞれを採点します。1回の良い面接だけで決めないでください。

パートやること良い答えの例
形容詞ではなく数字前の店に着任したときと離れたときの売上、人件費率、原価率、何を変えたかを聞く。昨年何人採用し、何人が今も働いているかを聞く具体的な数字、変化を起こした仕組みの説明、恥じることのない定着率
料理長との関係「料理長が、原価がメニュー価格の45%になる料理を加えたいと言っています。どうしますか」「サービススタッフが、お客様の前で料理長に怒鳴られたと訴えてきました。まず誰と話しますか」料理長とは個別に話し、データを持ち込み、チームの前では料理長の権威を守りつつ問題そのものには対処する
本社との通話日本に報告する体制なら、月次報告のつもりで先月の実績を説明するビデオ通話を選考に入れる答えられない質問にも、当て推量や取り乱すことなく対応する
実地面接1〜2回の有給シフトで店に入ってもらい、最初の90日で変えたいことを3つ挙げてもらう大事なことに気づき、店を築いてきた人たちを傷つけずにそれを伝えられる

日本語力がその職務に必要なら、資格証明だけでなく、人手不足について料理長と短く電話で話すような現実的な課題で確認してください。

4. 給与:公的な数字と提示額の決め方

2026年9月27日確認の数字。米国労働統計局 Occupational Outlook Handbook、飲食店マネージャー(Food service managers、SOC 11-9051)、2025年5月:年収の中央値$69,390(時給$33.36)、下位10%は$45,960未満、上位10%は$107,640超、雇用数344,300人、2035年までに364,200人へ6%増加の見込み。シンガポール人材開発省が最後にレストランマネージャーの数字を公表したのは2024年6月のOccupational Wage Surveyで、月額総支給の中央値S$4,000。2025年6月版では再確認されていないため、古いデータとして扱ってください。

バイリンガルの「橋渡し役」に特化した公的な給与統計は、調べた限りどこにもなく、日本料理店のGMに対する上乗せ額を公表している国もありません。当て推量ではなく、3段階で提示額を決めてください。

  1. 自国の一般的な職業区分の中央値を起点にする。飲食店マネージャー、レストランマネージャー、またはそれに最も近い現地の区分を使い、パーセンタイルの分布の中で、初めてGMになる人は中央値付近に、複数店舗の経験を持つGMは75〜90パーセンタイル寄りに置きます。
  2. 必要な場合だけ橋渡し役の上乗せを加える。この点について数字を出せそうな採用担当者に聞いたところ、バイリンガルの橋渡し役の価格づけは、モノリンガルの現地GMの提示額と比較し、代わりに通訳や2人目のマネージャーを雇う場合の費用を加えることで行っているとのことでした。標準的な上乗せ率は確認できなかったため、想定の数字を使うのではなく、自社でその損得を計算してください。
  3. 候補者が手放す待遇全体と比べる。日本の飲食店マネージャーの給与は絶対額では大きく下回りますが、賞与の慣行、雇用の安定、そして日本の職業紹介事業の手数料の仕組みが、候補者にとっての「昇給」の意味を変えます。賃金比較の考え方は、料理人向けですが国別の寿司職人の給与で解説しています。

5. 2つの賞与設計の実例

賞与の仕組みは、多くのGM候補者にとって基本給以上に重要ですが、契約の段階まで曖昧にされがちです。内定の時点で、入社後ではなく算定式を示してください。条項そのものは雇用契約チェックリストをご覧ください。

単店舗の売上・人件費連動賞与複数店舗の利益連動賞与
向いている体制1店舗・GM1人2店舗以上を統括するGMまたはエリアマネージャー
算定式の例四半期ごとに、売上が予算以上で、かつ人件費率がその四半期の目標比率以下なら基本給の5%を賞与とする年間で、グループのEBITDAまたは管理可能利益が予算に対してどれだけ伸びたかに連動して基本給の10〜20%を賞与とし、四半期ごとに予算との差を確認する
歯止め売上と人件費の数字にかかわらず、その四半期に食品衛生や許認可の違反が記録された場合は賞与を支給しない算定式の中で1店舗が占める比重に上限を設け、1店舗の不調が他店で隠れたり、その逆が起きたりしないようにする
見直し四半期ごと、算定式自体は年1回見直し四半期ごとの予算確認、算定式は年1回見直し

6. 採用コストと採用スケジュール

次の項目は公表された数字ではなく、自社の給与、紹介手数料、移住費用を当てはめる欄です。大事なのはこの構成です。

項目当てはめる内容
基本給(年額換算)自社の提示額
社会保険料などの雇用主負担自国の雇用主負担率
目標達成時の賞与第5節の算定式から
人材紹介・エージェント手数料(利用する場合)初年度年収の一定割合であることが多い。依頼前に割合を書面で確認する
移住費用(日本から異動する場合のみ)移住に通常含まれる内容は料理人の引っ越し・住居支援パッケージを参照。異動するマネージャーにも同じ項目が当てはまる
初年度合計上記の合計
着任までの週数やること
8〜10週間前求人広告を書く前に、オーナーまたは本社と評価シートと報告系統を合意する
7週間前自国の規則で給与レンジの記載が必要な場合はそれを含めて求人を掲載する(下記8節参照)
5〜6週間前一次面接。数字と料理長との関係についての質問
3〜4週間前該当する場合は本社との通話。実地面接のシフト
2週間前内定提示。賞与算定式を書面で添える
0〜1週間前着任。最初の30日は評価シートの最初の90日リストに沿って進める

求人広告に給与レンジの記載を義務づける地域が増えています。たとえばニューヨーク州では、従業員4人以上の雇用主に対し、少なくとも一部をニューヨーク州内で行う仕事の求人に報酬レンジを記載するよう求めています。掲載前に、自店の州、市、国の規則を確認してください。法的な最低限に加えて、良いGMの求人広告には、GMの報告先、料理長がその部下に含まれるか、席数・客数・スタッフ数、1年目の優先課題が書かれています。

許認可を保有するのはどこでもオーナーや会社ですが、日々の現場で名目上の責任者となるのは通常GMです。法律上それが誰でなければならないかは市場によって異なります。ここでは概要のみを示すので、資格や酒類の詳細はリンク先をご覧ください。

市場食品衛生酒類
米国多くの州が認定食品衛生管理者を店舗に置くことを求める。カリフォルニア州のようにオーナーやGMを名指しし、更新周期を定める州もある。規則は州により異なる提供スタッフの研修や免許条件は州により異なる。ホールスタッフの採用を参照
英国全国一律の必須資格はないが、食品衛生評価の検査では「食品事業者」が名指しされ、実務上はGMであることが多い酒類の販売には個人免許保有者の許可が必要で、これも多くの場合GMが担う
オーストラリア各州の食品当局が多くの免許区分で食品衛生責任者を求めており、GMが務めることが多い酒類を提供する者は責任ある酒類提供(RSA)の資格が必要で、GMも対象
シンガポールシンガポール食品庁が店舗を許可し、規模の大きい店舗には指定の衛生責任者が必要酒類販売免許には責任者の指定が必要で、多くはGMが務める

国別の資格の詳細は国別の食品衛生資格をご覧ください。

8. 市場別のビザの注意点

市場日本人GMのルート備考
米国E-2条約ビザ事業の50%以上を日本国籍者が所有し、GMが管理職・監督職であることが条件。最長60か月発給。日本食レストランスタッフのE-2ビザを参照
英国実質的に新規スポンサーは閉じているSOC 1222(レストラン・ケータリング施設のマネージャー)は中技能に分類され、2026年9月時点でImmigration Salary ListにもTemporary Shortage Listにも掲載されていない
シンガポール給与要件を満たしたうえでのEmployment Pass2024年6月のレストランマネージャーの中央値(S$4,000)はEP基準月給を下回る。基準月給は最も若い申請者でS$5,600から。日本人GMには通常、中央値を大きく上回る給与が必要。シンガポールでの採用を参照
オーストラリアCafé or Restaurant Manager職業コードChefやCookとは別のコードで、同じ限定サービスの除外条件は付いていない。ノミネート前に現行のCore Skills Occupation Listを確認すること

バイリンガルの候補者や日本の本社が関わる場合は、内定の前に、職務範囲と報告系統を両言語で書面にしておいてください。ビザ申請の後になって権限をめぐる認識の違いが発覚することを防げます。

GM役割ブリーフ — 1枚もの、英語・日本語
Restaurant: [name, city] / 店舗名・所在地:[ ]
Reports to: [owner / head office contact] / 報告先:[ ]
Direct reports: [floor team, and state plainly whether the head chef reports to the GM or not] / 直属の部下:[ホールチーム。料理長がGMに報告するかどうかを明記]
Five measured outcomes: sales vs forecast, labour cost %, food cost vs theoretical, staff retention, kitchen-floor coordination / 5つの評価指標:売上予算比、人件費率、原価の理論値比、定着率、厨房とホールの連携
First 90 days: agree decision rights with the head chef; review roster and suppliers; shadow one full weekend service / 最初の90日:料理長と決定権の分担を合意する。シフトと取引先を確認する。週末の営業を1回通しで見る
Bonus formula: [attach the written formula from section 5] / 賞与の算定式:[第5節の書式を添付]

変わる数字:米国BLSの飲食店マネージャー給与(次回更新は2027年5月頃のデータ見込み)。シンガポールのレストランマネージャーの数字は2024年6月のもので、今回確認した時点で2025年6月版のMOM発表では再確認されていません。英国の職業リストの掲載状況は定期的に見直されます。次回確認は2027年3月です。

よくある質問

日本料理店の総支配人にはいくら払うべきですか。

米国BLSの飲食店マネージャーの中央値である年収$69,390(2025年5月)、または自国で最も近い区分を起点にし、経験に応じてパーセンタイルの分布の中で位置づけてください。バイリンガルの「橋渡し役」に特化した公的な数字はないため、その上乗せ分は通訳や2人目のマネージャーを雇う場合の費用と比較して決めてください。

料理長は総支配人に報告すべきですか。

どちらを採用する前にも、これを文書で決めてください。多くの日本料理店では、肩書が示す以上に料理長のほうが実際の権限を持っており、この関係が曖昧なことがGM採用の失敗で最も多い原因の一つです。

GMの賞与は何に連動させるべきですか。

1店舗であれば、売上予算比と人件費率の目標達成に連動する四半期賞与がうまく機能します。複数店舗を統括するGMであれば、四半期ごとに確認しながら年間のグループ利益の伸びに連動させるほうが向いています。いずれの場合も、食品衛生や許認可の違反が記録された四半期は賞与を外してください。

米国のレストランは日本からの総支配人にビザをスポンサーできますか。

できます。事業の50%以上を日本国籍者が所有し、GMの職務が管理職・監督職であれば、E-2条約ビザで最長60か月発給されます。その所有構造がない事業では使えません。

本記事は一般的な情報であり、法律、税務、移民に関する助言ではありません。数値と規則は2026年9月時点の下記公式情報に基づくもので、変更される可能性があります。採用前に現地の雇用法と許認可の規則を確認してください。

出典

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