北米

ロサンゼルス出店の人材確保:E-2と日米協定

在留邦人数が世界最多の都市で、日本から誰を送り、誰を現地で採るか。E-2ビザの所有・国籍要件、日米社会保障協定の6か月ルール、現地の賃金水準を整理します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 数字で見るロサンゼルス
  2. 日本から送る人のビザはE-2が軸になる
  3. 出向者の社会保障:日米協定の「6か月ルール」
  4. 現地採用の人材と給与水準
  5. 役割ごとの調達先と準備の順番

ロサンゼルスは、世界で最も在留邦人が多い都市です。日本の外食企業が米国に出店する際、現地で日本語の話せる調理スタッフを探せる可能性が最も高い場所の一つと言えます。一方で、店の味を担う料理長は日本から送りたいという企業がほとんどで、その場合はビザと日米の社会保障協定の扱いが計画の中心になります。

この記事では、日本本社の海外展開担当者の目線で、ロサンゼルス出店時の人員の集め方を整理します。カリフォルニア州とロサンゼルス市の最低賃金、求人票への給与レンジ記載義務などの現地ルールは、英語版のHiring a sushi chef in Los Angelesで詳しく扱っています。

1. 数字で見るロサンゼルス

在留邦人の数は料理人の数ではありません。それでも、日本語で指示が通じる調理スタッフやホールスタッフを現地で見つけられる可能性は、米国のどの都市よりも高いと考えられます。

2. 日本から送る人のビザはE-2が軸になる

米国には料理人専用の就労ビザはありません。日本の外食企業が日本から人を送る場合、まず検討するのがE-2(条約投資家)ビザです。米国務省によると、日本との通商航海条約は1953年10月30日に発効しており、日本はE-2の対象国です。

ビザ主な要件・特徴出店時の使いどころ
E-2事業の50%以上を条約国(日本)の国民が所有。従業員は企業と同じ国籍で、管理職・役員、または事業運営に不可欠な専門技能を持つこと。日本国籍者のE-2ビザは有効期間60か月、相互主義手数料なし、申請料(MRV)US$315日本本社が過半を出資する現地法人に、料理長・店長を送る
O-1B料理を含む芸術分野で卓越した能力を示す。受賞、または6項目中3項目以上の基準。最長3年、年間上限なし受賞歴や実績が明確な料理人
H-2B一時的な需要(原則1年以内)のための季節労働ビザ。年間上限66,000件通年営業の店舗には向かない
EB-3永住権(グリーンカード)。PERMの労働認定を経て申請。長期間を要する現地で長く働いてもらう料理人

E-2で重要なのは、従業員が企業と同じ国籍であることです。日本本社の出資比率で企業の国籍が決まるため、現地パートナーとの合弁で日本側の持分が過半を下回ると、E-2を前提とした人材計画が成り立たなくなります。出資構成を決める段階で人事担当が関わるべき理由はここにあります。E-2の申請実務はE-2ビザで料理人を呼ぶで解説しています。

3. 出向者の社会保障:日米協定の「6か月ルール」

日米の社会保障協定は2005年10月に発効しています。日本年金機構によると、二重加入の調整対象は、日本側が公的年金制度と公的医療保険制度、米国側が公的年金制度(社会保障制度)と公的医療保険制度(メディケア)です。日本の事業主から5年以内の見込みで派遣される場合は、日本の制度だけに加入し、米国の制度は免除されます。

日米協定には、出店計画に直接影響する条件があります。

6か月ルールは、「開業のために日本で料理人を新たに採用し、すぐにロサンゼルスへ送る」という計画に関わります。採用から派遣までの期間が短いと、協定による米国制度の免除を受けられない可能性があります。日本で採用してから一定期間、国内の店舗で働いてもらう計画にすると、店の味を覚えてもらう期間にもなります。

免除を受けるには、日本の事業主が年金事務所に「適用証明書交付申請書」を提出し、交付された適用証明書を派遣者が米国の事業所に提出します。申請は就労開始予定日のおおむね6か月前から可能です。税については、日米租税条約(原条約は2004年3月30日発効、改正議定書は2019年8月30日発効)があります。詳しくは社会保障協定と料理人海外勤務者の税金をご覧ください。

4. 現地採用の人材と給与水準

米国労働統計局(BLS)の2025年5月の賃金データでは、ロサンゼルス・ロングビーチ・アナハイム都市圏の「Chefs and Head Cooks」の年収は、下位10%がUS$37,310、中央値がUS$69,990、上位10%がUS$102,760です。全米の中央値US$62,470より高く、ニューヨーク(US$71,780)よりやや低い水準です。BLSは寿司職人を区別して集計していないため、あくまで料理長・料理人全体の目安です。

現地採用では、就労資格の確認(Form I-9)が欠かせません。他社のビザで働いている人は、雇用主が変わる際に新たな申請が必要になることがあります。最低賃金も州と市で別に定められています。カリフォルニア州は2026年1月1日から時給US$16.90、ロサンゼルス市は2026年7月1日から時給US$18.42です。店舗がどの市にあるかで適用される額が変わるため、物件を決めた時点で確認してください。現地ルールの詳細は英語版のロサンゼルス記事をご覧ください。

5. 役割ごとの調達先と準備の順番

役割主な調達先検討のポイント
料理長・店長日本本社からの出向E-2の国籍要件、日米協定の6か月ルールと適用証明書
寿司カウンター日本からの出向、または現地の日本人・日系の職人E-2の「不可欠な専門技能」に当たるかを整理する
調理スタッフ・ホール現地採用I-9による就労資格確認、州・市の賃金ルール
  1. 現地法人の出資構成を決める段階で、E-2の所有要件(日本側50%以上)を確認する。
  2. 日本から送る人を決め、日本での在籍期間が6か月ルールを満たすか確認する。
  3. E-2の申請書類を準備し、同時に適用証明書の申請時期(就労開始のおおむね6か月前から)を押さえる。
  4. 現地採用の職種と給与レンジを決め、求人を出す。
  5. 出向者の出国前に、年末調整、住民税、在留届の案内をする。

出店全体のスケジュールは海外出店の人材計画、出向と現地採用の比較は海外赴任と現地採用の違いで解説しています。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。米国のビザ要件・手数料、日米協定の運用、州・市の労働法は変更されることがあります。2026年9月時点で確認した下記の一次情報をご確認のうえ、必要に応じて米国移民法の弁護士、年金事務所、税理士にご相談ください。

出典

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