給与・コスト

飲食店のスタッフ住居:形態と法律上の制約

飲食店がスタッフに住居を用意する4つの形態、米国と英国で住居を賃金に算入する際のルール、カナダ低賃金枠LMIAの住居要件、雇用終了時の住居の扱いを解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 飲食店が住居を用意する理由
  2. 4つの住居の形態
  3. 住居と最低賃金:確認できたルール
  4. 住居とビザの条件
  5. スタッフ住居の日々の運営
  6. 雇用が終わるとき

日本から来た料理人にとって、住まい探しは移住のなかで最も難しい部分になりがちです。現地での信用履歴も保証人もなく、敷金の用意がないこともあり、家主とのやりとりには言葉の壁もあります。そこで多くの飲食店が住居を用意しています。うまく運営すれば採用と定着に役立ちますが、失敗すると、家主と入居者の関係が雇用関係と混ざり合い、一方のトラブルが両方のトラブルになります。

本ガイドでは、飲食店が使っている住居の形態、公的な情報源で確認できた住居と賃金に関する法律上のルール(2026年9月時点)、よくある問題を避ける運営方法を解説します。着任直後の数週間については、料理人の渡航・移住支援海外で働く料理人の住まいと渡航費をご覧ください。

1. 飲食店が住居を用意する理由

その代わりにリスクと手間が生じます。物件の管理、同居人同士のトラブル、そして雇用が終わったときの住まいの扱いに、店が責任を負うことになります。

2. 4つの住居の形態

形態仕組み向いているケース注意点
一時滞在のみ最初の数週間はサービスアパートなどの費用を雇用主が負担し、その後は本人が自分で借りる賃貸市場が機能している都市十分な期間を確保し、内見や契約を手伝う
住宅手当毎月一定額を給与に上乗せし、本人が自分で借りる自立して暮らしたい料理人、ベテラン現地での課税の扱いを確認する。入居のしにくさは解決しない
店が借りる個別の部屋店が部屋を借り、無償または有償で料理人に提供するベテランの料理人、家族連れ賃貸契約の期間と雇用期間のずれ、この使い方への家主の同意
スタッフの共同住宅店が大きめの物件を借り、複数のスタッフがそれぞれ1部屋を使うリゾート地、若手調理スタッフのチームハウスルール、プライバシー、住まいのもめごとが厨房に持ち込まれること

3. 住居と最低賃金:確認できたルール

多くの国で法律上の要点となるのは、住居を賃金の一部として扱えるか、扱えるならいくらまでか、そして本人にいくら請求できるかです。

米国(公正労働基準法)

連邦のルールでは、従業員に通常提供している住居の「合理的な費用」を賃金に算入することが認められています。29 CFR 531.3によると、合理的な費用とは雇用主の実費以下の額で、雇用主や関係者の利益を含んではなりません。減価償却を含む運営・維持費に、償却後の投下資本に対する5.5%以内の利息を加えて計算しますが、適正な賃料相当額を超えることはできません。主に雇用主の利益や便宜のために提供される設備は算入できません。州のルールのほうが厳しい場合もあります。

英国(全国最低賃金)

最低賃金の計算に算入できる現物給付は住居だけで、しかも住居オフセット(accommodation offset)という仕組みを通じてのみ認められます。2026年4月からのオフセット額は1日£11.10、または1週£77.70です(2025年は£10.66と£74.62)。オフセット額を超える家賃を徴収すると、超過分が全国最低賃金・全国生活賃金の判定に使う賃金から差し引かれます。住居が無償の場合は、オフセット額が最低賃金の判定上の賃金に加算されます。食事などほかの給付は算入できません。

実務上は、全国生活賃金(2026年4月から時給£12.71)に近い給与の調理スタッフからスタッフ住居の家賃を徴収する場合、給与期間ごとにオフセットを確認してください。市場並みの家賃を取ると、実質的な賃金が法定最低額を下回るおそれがあります。

カナダ(低賃金枠のLMIA)

一時外国人労働者プログラムの低賃金枠では、雇用主は適切で手頃な住居を提供するか、確保できるようにしなければなりません。「手頃」とは、住居費(家賃またはローン、電気、燃料、水道その他の公共料金)が税引前収入の30%未満であることをいいます。「適切」とは、配管や電気配線の不具合や構造上の修繕など、大規模な修繕を必要としないことです。調理スタッフのLMIA手続きをご覧ください。

その他の国

本ガイドでは、シンガポールその他の国の住居に関するルールは確認していません。どの国でも、家賃を給与から差し引く前に賃金控除のルールを、また提供する住居に現地の借家法が適用されるかどうかを確認してください。

4. 住居とビザの条件

ビザで最低給与が定められている場合、無償や格安の住居でその不足分を埋めることは通常できません。確認できた最も明確な例はオーストラリアです。Skills in Demandビザ(サブクラス482)のCore Skillsストリームでは、現物給付を除いた年収がCore Skills所得基準(2026年7月1日からA$79,423)に達している必要があります。住居は、要件を満たす給与の一部の代わりではなく、その上乗せの福利厚生として提供してください。オーストラリアでの日本人料理人の採用をご覧ください。

オファーレターでは住居を独立した項目にしてください。何を提供するか、本人の負担額、含まれるもの(光熱費、インターネット、家具)、雇用の条件なのか任意なのかを明記します。

5. スタッフ住居の日々の運営

6. 雇用が終わるとき

店が用意する住居で最もトラブルになりやすいのがこの場面です。あらかじめ決めて、書面にしておいてください。

本人が取り決めに優先する借家人としての権利を持つかどうかは、現地の法律と取り決めの形によって決まります。本ガイドではどの国についてもこのルールを確認していないため、「雇用終了とともに住居も終了する」という条項に頼る前に、現地の弁護士にご相談ください。スポンサービザの料理人の場合は、出国に関する義務と時期を合わせてください。例えばシンガポールでは、本人が書面で別途同意しない限り、雇用主はEmployment Passを取り消す前に帰国の航空券を購入しなければなりません。その他の雇用終了時の義務については試用期間の評価をご覧ください。

本記事は一般的な情報であり、法律上・税務上の助言ではありません。賃金控除、住居の給付、借家に関するルールは国・州・都市によって異なります。スタッフに住居を提供する前に、現地の労働法専門の弁護士と会計士にご相談ください。

出典

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