アジア・オセアニア

マレーシアEP 2026年改定と和食店の対応

2026年6月1日施行のマレーシアEP新給与方針を和食店目線で解説。基本給のみで判定される新基準、カテゴリー別の年数上限、申請の5段階、2027年から必須の後継者育成計画まで。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 2026年6月1日の改定で何が変わったか
  2. カテゴリー別の新基準
  3. 「基本給のみ」が和食店に与える影響
  4. 申請手続きの5段階と処理日数
  5. 2027年1月からの後継者育成計画
  6. いま働いている料理人の扱い
  7. 和食店がいま決めるべきこと

マレーシアの内務省・入国管理局は、Employment Pass(EP)の給与方針を改定し、2026年6月1日以降に提出されるすべての新規・更新申請に新基準を適用しています。最低給与はカテゴリーごとにほぼ倍増し、2027年1月1日からはカテゴリーIIとIIIで後継者育成計画(succession plan)の提出が必須になります。

日本人料理人にとってEPは事実上唯一の就労経路です。低技能の外国人労働者制度(Visit Pass (Temporary Employment))の受入国に日本は含まれていません。本記事では、入国管理局の公式資料「Revised Expatriate Salary Booklet」に沿って、和食店の給与設計と手続きへの影響を整理します。

1. 2026年6月1日の改定で何が変わったか

適用は厳格で、2026年6月1日以降に提出された申請はすべて新方針で審査されます。

2. カテゴリー別の新基準

カテゴリー最低基本給(改定前)最低基本給(2026年6月1日〜)雇用期間(改定前)雇用期間(改定後)家族帯同
IRM10,000以上RM20,000以上1申請あたり最長5年最長10年
IIRM5,000〜9,999RM10,000〜19,9991申請あたり最長2年最長10年(後継者育成計画あり)
IIIRM3,000〜4,999RM5,000〜9,9991申請あたり最長12か月最長5年(後継者育成計画あり)可(新設)

雇用期間は最初のEP承認日から起算し、雇用する会社に紐づきます。会社を移った場合は新しい会社での雇用開始日から、カテゴリーが変わった場合はそのカテゴリーのパス発行日から、改めて数えます。EP自体は数次入国可能で、1回のパスの期間は雇用契約と外国人委員会(Expatriate Committee)の承認により1か月〜60か月です。

帯同できる家族は、Dependant Passで配偶者と18歳未満の子、長期社会訪問パス(LT-SVP)で両親、配偶者の両親、18〜25歳の子、事実婚の配偶者です。

3. 「基本給のみ」が和食店に与える影響

日本人料理人の給与は、基本給を抑えて住宅手当、食事手当、皆勤手当などを上乗せする形がよく見られます。新方針では、判定に使うのはマレーシアで課税される基本給だけです。

例えば、基本給RM4,000に住宅手当RM1,500を加えて総額RM5,500を払っていても、カテゴリーIIIの最低基本給RM5,000を満たしません。日本本社から支払う「留守宅手当」や国外払いの給与も算入されません。総額を変えずに基本給へ組み替えるか、基本給そのものを引き上げる必要があります。

給与の組み替えは、社会保障拠出、所得税、残業代の計算基礎にも影響します。現地の会計事務所と一緒に、総人件費がどう変わるかを試算してから決めてください。料理長クラスをカテゴリーIIで雇うには、基本給RM10,000以上が必要です。

4. 申請手続きの5段階と処理日数

EPの申請はExpatriate Services Division(ESD)のオンラインシステムで行い、TalentCorpの子会社であるMYXpatsが処理します。公式資料が示す流れと処理日数は次のとおりです。

段階内容処理日数
1. 企業登録ESDへの会社登録(初回のみ)5営業日
2. 労働局関連の前提手続き雇用法(1955年)第60K条に基づく半島マレーシア労働局の承認、および必要な場合のMYFutureJobsへの求人掲載10営業日(並行処理)
3. 推薦状規制業種のみ、所管機関・規制当局の推薦状(Xpats Gateway経由)ファストトラック3営業日/通常10営業日
4. EP申請ESDオンラインでの申請ファストトラック2営業日/通常5営業日
5. 裏書とi-KAD発行新規入国者は到着時またはクアラルンプール国際空港の窓口で裏書1営業日

これはあくまで審査側の処理日数です。求人掲載の期間、書類の準備、本人の退職手続きや引っ越しを加えると、実際の着任までには相応の期間がかかります。

推薦状が必要な「規制業種」について

2023年6月にXpats Gatewayへ一元化された推薦状の対象は11業種で、観光(観光芸術文化省、MOTAC)、製造・一部サービス(MIDA)、金融などです。独立したレストランを対象とする区分はこの11業種の一覧にはありません。ホテル内の店舗など観光業に該当する場合の扱いを含め、自社の区分は申請前にESDで確認してください。

払込資本金

ESDのガイドブックは、外国人を雇う会社に株主構成別の払込資本金要件を示しており、100%外資の会社はRM500,000、合弁(外資30%以上)はRM350,000、100%現地資本はRM250,000とされています。ただし、このガイドブックは2015年作成の旧版で、最新の要件は確認できませんでした。現地法人を設立する段階でESDに確認することをおすすめします。

5. 2027年1月からの後継者育成計画

2027年1月1日以降、カテゴリーIIとIIIの申請には後継者育成計画の提出が必須になります。目的は「EPの在任期間中に現地従業員のスキルを高めること」とされています。公式資料には様式の詳細までは示されていませんが、和食店であれば次のような内容が考えられます。

カテゴリーIIIの通算上限は5年です。5年後にどのポジションを現地スタッフに任せるのかを、採用の時点から描いておく必要があります。現地人材の育成方法は現地スタッフへの和食研修(英語)日本の食文化人材育成事業も参考になります。

6. いま働いている料理人の扱い

7. 和食店がいま決めるべきこと

  1. 全EP保持者の更新時期と基本給を一覧にする:新基準に届かない人を洗い出します。
  2. 給与体系を組み替える:手当中心から基本給中心へ。国外払いの部分も見直します。
  3. カテゴリーの上限年数から逆算する:カテゴリーIIIなら通算5年。その間の育成計画を作ります。
  4. 新規採用の予算を見直す:最低でも基本給RM5,000。これに住居や渡航費が加わります。費用の全体像は海外での和食人材の採用コストをご覧ください。

シンガポールと比べると、マレーシアには点数制もレビーもありませんが、基本給の下限と年数上限で管理される仕組みになりました。シンガポールの詳細はシンガポールEP・S Pass、英語版はHire a Japanese chef in Malaysiaです。

本記事は2026年9月22日時点でマレーシア入国管理局、MOTACの公表資料を確認して作成した一般情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。運用の詳細は変更される可能性があります。申請前にESD/MYXpatsに確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

出典

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