アジア・オセアニア

シンガポールEP・S Passで日本人料理人を雇う

日本人料理人に使えるのはEPとS Passのみ。和食店の典型的な条件でCOMPASSを計算し、F&B業界のC1給与ベンチマーク、2027年1月の資格給与改定、S Passの枠とレビーまで具体的に整理します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 日本人料理人に使えるパスは2つだけ
  2. 資格給与:現行と2027年1月以降
  3. COMPASSを和食店の条件で計算する
  4. F&B業界のC1給与ベンチマーク
  5. S Pass:枠とレビーの計算
  6. EPかS Passか:判断の目安
  7. 2027年改定に向けたスケジュール

シンガポールで日本人料理人を雇う場合、選択肢はEmployment Pass(EP)とS Passの2つに絞られます。どちらも職種リストはなく、判断材料は給与、会社の人員構成、そして本人の年齢と学歴です。

本記事では、人材開発省(MOM)の公表資料をもとに、和食店の典型的な条件でCOMPASSの点数がどう決まるか、S Passのレビーが年間いくらになるかを具体的に計算します。2027年1月の改定と、2026年8月に公表された新しい給与ベンチマークも反映しています。

1. 日本人料理人に使えるパスは2つだけ

サービス業のWork Permitは、受入可能な出身国・地域が限定されており、日本は含まれていません。調理補助や洗い場のポジションであっても、日本国籍者をWork Permitで雇うことはできません。

Employment PassS Pass
資格給与(金融業以外、現行)月S$5,600(23歳以下)〜S$10,700(45歳以上)月S$3,300〜S$4,800
2027年1月1日以降の新規申請S$6,000〜S$11,500S$3,600〜S$5,100
ポイント制COMPASSで40点以上なし
人数枠なしサービス業サブクォータ:全従業員の10%
レビー(雇用税)なし月S$650

比較の目安として、MOMの職業別賃金調査(2024年6月)では、月額総支給の中央値がchef S$3,850、senior cook S$3,425、cook S$2,028、restaurant manager S$4,000です。EPの資格給与は、市場の料理人の中央値を大きく上回ることがわかります。

2. 資格給与:現行と2027年1月以降

EPの資格給与は年齢とともに上がり、23歳以下で最低、45歳以上で最高になります。新しい水準は2027年1月1日以降の新規申請と、2028年1月1日以降に期限が来る更新に適用されます。

和食店にとって厄介なのは、欲しいベテランほど基準が高いことです。45歳以上の料理長をEPで雇うには、2027年以降は月S$11,500以上の固定給が必要になります。今EPで働いている料理人も、2028年以降の更新時には新基準を満たさなければなりません。今のうちに更新時期と給与改定の計画を立てておく必要があります。

3. COMPASSを和食店の条件で計算する

EPは資格給与を満たしたうえで、COMPASS(補完性評価の枠組み)で40点以上が必要です。固定月給S$22,500以上、企業内転勤者(ICT)、1か月以内の業務は対象外です。

基準内容点数
C1 給与固定月給を、業界の現地PMET(専門職・管理職等)給与の年齢別パーセンタイルと比較。90パーセンタイル以上で20点、65〜90で10点、65未満で0点0/10/20
C2 学歴トップクラスの大学等の学位20点、その他の学位相当10点、学位相当なし0点0/10/20
C3 多様性会社のPMETに占める本人と同じ国籍の割合。5%未満20点、5〜25%未満10点、25%以上0点。PMETが25人未満の会社は一律10点0/10/20
C4 現地雇用への貢献会社のPMETに占める現地人の割合を業界と比較。PMETが25人未満の会社は一律10点0/10/20
C5 不足職種ボーナスShortage Occupation List掲載職種。2026年1月1日発効のリストに料理人(Chef/Cook)はない
C6 戦略的経済優先分野ボーナス対象プログラムに参加する企業10

典型例:PMET25人未満の和食店、学位のない料理人

多くの和食店はこの条件に当てはまります。計算すると次のとおりです。

残りの20点はC1で取るしかありません。つまり、F&B業界の現地PMET給与の90パーセンタイル以上を払えるかどうかが、EP取得の分かれ目になります。65パーセンタイルの給与ではC1が10点、合計30点で不合格です。

調理師学校卒の料理人の場合、その資格がC2で「学位相当」と評価されるかは個別判断です。点数の見通しはMOMのセルフアセスメントツール(SAT)で事前に確認できます。COMPASSの詳しい解説は英語版のSingapore COMPASS points for chefsにもあります。

4. F&B業界のC1給与ベンチマーク

MOMは業界別・年齢別のC1ベンチマークを毎年公表しています。F&B Services(飲食サービス業)の主な年齢の値を抜き出しました(固定月給、S$)。

年齢現行 10点現行 20点2027年〜 10点2027年〜 20点
23歳以下4,2415,7884,3685,799
30歳4,8297,5245,0347,483
35歳5,2498,7635,5118,687
40歳5,66910,0035,9879,890
45歳以上6,08911,2436,46311,094

「現行」は2025年8月公表の値で、2026年1月1日〜12月31日の新規申請と、2026年7月1日〜2027年6月30日に期限が来る更新に使われます。「2027年〜」は2026年8月公表の値で、2027年1月1日以降の新規申請2027年7月1日以降に期限が来る更新に使われます。C1は固定月給のみで判定されます。

表から読み取れるのは、35歳の料理人を小規模な和食店がEPで雇うなら、2026年中は月S$8,763以上、2027年以降は月S$8,687以上の固定給が目安になるということです。20点ラインは年齢別で、若いほど低くなります。2027年以降、45歳以上では資格給与(S$11,500)が20点ライン(S$11,094)を上回るため、資格給与を満たせばC1は自動的に20点です。

5. S Pass:枠とレビーの計算

S PassにはCOMPASSがない代わりに、人数枠とレビーがあります。

S Passの資格給与も年齢で上がります。45歳のベテランには現行でS$4,800、2027年以降の新規申請ではS$5,100が必要です。給与にレビーを加えると、S Passで月S$4,800の料理人を雇う実質的な人件費は、月S$5,450以上になります。

6. EPかS Passか:判断の目安

状況現実的な選択
料理長候補で、F&Bの90パーセンタイル以上を払えるEP(レビーなし、枠なし)
給与はS Passの水準で、現地スタッフが十分にいるS Pass(レビーを予算化)
小規模店で現地スタッフが少ないS Passの枠が足りない可能性。EPの給与水準を検討
日本本社の社員をグループ内で異動させるEPの企業内転勤者(ICT)はCOMPASS対象外。要件を確認

C1は固定月給で判定されるため、住居手当や賞与で総額を上げてもC1の点数は上がりません。給与は固定月給で設計します。条件の組み方はHire a Japanese chef in Singapore(英語)、コスト全体は海外での和食人材の採用コストも参考になります。

7. 2027年改定に向けたスケジュール

  1. 2026年中:新規のEP申請は現行基準。採用予定があるなら、年内申請のほうが資格給与は低く済みます。
  2. 2027年1月1日:EP・S Passとも新しい資格給与、C1も新ベンチマークに切り替え。
  3. 2027年7月1日以降に期限が来る更新:C1は新ベンチマーク。
  4. 2028年1月1日以降に期限が来る更新:資格給与も新基準。

既存の料理人の更新時期を一覧にして、給与改定の時期と合わせておくことをおすすめします。定着の観点からの給与設計は料理人の定着施策で扱っています。マレーシアとの比較はマレーシアEP 2026年改定をご覧ください。

本記事は2026年9月22日時点でシンガポール人材開発省(MOM)の公表情報を確認して作成した一般情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。審査は個別に判断されます。申請前にMOMのセルフアセスメントツールで確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

出典

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