採用の進め方

海外の料理人の家族帯同:主要6か国の制度比較

日本から呼ぶ料理人は家族を連れて行けるのか、配偶者は働けるのか。米国、カナダ、英国、オーストラリア、シンガポール、マレーシアのルールを公式情報から整理し、店側で決めておくべき条件をまとめました。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 家族帯同は採用条件の一部になる
  2. 主要6か国の比較表
  3. 米国:E-2、O-1、H-2B
  4. カナダ:配偶者の就労許可は職種で決まる
  5. 英国:料理人は家族を呼びにくい
  6. オーストラリア、シンガポール、マレーシア
  7. 店側で決めておくこと

日本から料理人を呼ぶとき、面接の後半でほぼ必ず出る質問が「家族は連れて行けますか」です。配偶者や子どもがいる30代・40代の料理人ほど、この答えで応募するかどうかを決めます。ところが、家族を帯同できるか、配偶者が現地で働けるかは、店の方針ではなくビザの種類と給与額でほぼ決まります。

この記事では、2026年9月時点で各国の公式情報から確認できた範囲で、主要6か国の家族帯同のルールを整理し、採用条件として店側が先に決めておくべきことを説明します。確認できなかった点は、そのように書いています。

1. 家族帯同は採用条件の一部になる

家族帯同の可否は、求人票の「待遇」の欄に書くべき情報です。理由は3つあります。

2. 主要6か国の比較表

料理人の採用でよく使われる在留資格について、家族の帯同と配偶者の就労を比べます。

国・在留資格家族の帯同配偶者の就労
米国 E-2配偶者と21歳未満の未婚の子がビザを申請できる規則上、本人の就労許可は家族に及ばない。配偶者の就労の現行の扱いは今回確認できず(後述)
米国 O-1配偶者と未成年の未婚の子がO-3として帯同できる就労許可を得ない限り働けない
米国 H-2B配偶者と子がH-4として帯同できるH-4の在留資格自体に就労資格はない
カナダ(LMIAによる就労許可)本記事では、配偶者の就労許可の条件のみ確認配偶者のオープンワークパーミットは本人の職種で決まり、シェフ(NOC 62200)と調理師(NOC 63200)は対象の一覧にない
英国 Skilled Worker(シェフ SOC 5434)「中程度の技能(medium skilled)」の職種は、2025年7月22日より前から継続して雇用されている場合などを除き、家族を呼べない本記事では確認していない
オーストラリア 482(SIDビザ)パートナーと扶養する子を申請に含められる家族も就労・就学できる
シンガポール EP・S Pass固定月給S$6,000以上でDependant's Pass(配偶者と21歳未満の未婚の子)配偶者は自分の就労パスが必要
マレーシア EPカテゴリーI・IIは可能。カテゴリーIIIも2026年6月1日以降の申請から可能に本記事では確認していない

3. 米国:E-2、O-1、H-2B

米国には料理人専用のビザがなく、和食店で使われるのは主にE-2、O-1、H-2Bです。家族の扱いはそれぞれ異なります。

E-2(条約投資家ビザ)

国務省の案内では、配偶者と21歳未満の未婚の子は、本人に同行または後から合流するためにビザを申請できます。配偶者であることは婚姻証明で示す必要があります。

配偶者の就労については注意が必要です。連邦規則(8 CFR 274a.12(a)(5))は、E-1・E-2の本人は条約上の要件を満たす会社でのみ働けるとし、その就労許可は家族には及ばないと定めています。一方、米国移民局(USCIS)はE・Lの配偶者の就労について別に案内を出していますが、本記事の作成時点ではUSCISのサイトにアクセスできず、現行の扱いを確認できませんでした。配偶者の就労を採用条件に含める場合は、移民弁護士に確認してください。E-2全般は米国E-2ビザの解説にまとめています。

O-1(卓越能力者ビザ)

連邦規則(8 CFR 214.2(o))では、O-1の配偶者と未成年の未婚の子はO-3として、本人と同じ期間・条件で帯同できます。ただし配偶者も子も、就労許可を受けない限り働けません

H-2B(季節・一時的な非農業労働者)

配偶者と子はH-4として帯同できますが、規則は「H-4の在留資格は、それ自体では就労資格を与えない」と定めています。H-4の配偶者に就労許可の道があるのはH-1Bの配偶者の一部だけで、H-2Bの家族は対象ではありません。

4. カナダ:配偶者の就労許可は職種で決まる

カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)の案内(2026年6月12日更新)によると、外国人労働者の配偶者がオープンワークパーミット(雇用主を限定しない就労許可)を得られるのは、本人が次のいずれかに当たる場合です。

シェフ(NOC 62200、TEER 2)と調理師(NOC 63200、TEER 3)は、この指定職種の一覧に含まれていません。また、2025年1月21日以降、この措置では扶養する子は対象外になりました。例外として、本人が経済移民プログラムで永住権を申請している場合は、職種を問わず、就労許可が6か月以上残っていれば家族が対象になると案内されています。

つまり、LMIAを取ってシェフを呼ぶ場合、配偶者は原則として自分で別の就労許可を取る必要があります。LMIAの手順はカナダのLMIAと調理師の就労許可を参照してください。

5. 英国:料理人は家族を呼びにくい

英国ではシェフ(SOC 5434)は「中程度の技能(medium skilled)」の職種に分類されます。英国政府の案内では、中程度の技能の職種で働くSkilled Workerは、原則として2025年7月22日より前から継続してその職種で雇用されている場合などを除き、家族を呼ぶことができません。

そもそもシェフは移民給与リスト(Immigration Salary List)にも一時的不足職種リストにも載っておらず、新たに海外からシェフをスポンサーする道は事実上閉じています。すでに雇用している料理人の家族について考える場合、家族には生活資金の証明が必要で、金額はパートナー£285、1人目の子£315、2人目以降の子1人につき£200です。英国の状況は英国の和食人材採用(2025年以降)で詳しく説明しています。

6. オーストラリア、シンガポール、マレーシア

オーストラリア:家族も働ける

内務省の案内では、Skills in Demandビザ(サブクラス482)はパートナーと扶養する子などを「二次申請者」として同じ申請に含められ、家族もオーストラリアで生活し、就学し、就労できます。申請を出した後から家族を追加することはできず、後から合流する家族は別途「subsequent entrant」として申請します。家族を呼ぶ予定があるなら、最初の申請の段階で本人と話しておくべき点です。ビザ全体はオーストラリアの調理師ビザを参照してください。

シンガポール:月給S$6,000が分かれ目

人材開発省(MOM)の案内では、Dependant's Pass(配偶者と21歳未満の未婚の子)を申請できるのは、EPまたはS Passの保有者で、固定月給がS$6,000以上の人です。世帯収入ではなく本人の給与で判定されます。

参考までに、MOMの職業別賃金調査(2024年6月)では、シェフの月額中央値(総額)はS$3,850です。一般的な水準の給与では家族を呼べないことになります。家族帯同を条件にするなら、給与を固定月給S$6,000以上に設計する必要があります。また、配偶者が働くには、雇用主が配偶者のためにEP、S Pass、またはDP保有者向けのWork Permitを申請する必要があります。

マレーシア:カテゴリーIIIにも拡大

入国管理局の新しい外国人雇用方針では、2026年6月1日以降に申請されたEPは、カテゴリーIII(基本月給RM5,000〜9,999)でも家族(Dependant Pass)を呼べるようになりました。対象は配偶者と18歳未満の子で、18〜25歳の子や事実婚の配偶者はLong-Term Social Visit Passの対象です。給与の判定は基本給のみで、手当や賞与は含みません。制度の詳細はマレーシアEPの2026年改正にあります。

この記事で扱っていない国について。香港、台湾、タイ、UAEなどの家族帯同の条件は、今回の確認対象に含めていません。各国の入国管理当局で最新の条件を確認してください。

7. 店側で決めておくこと

制度上帯同できる国でも、実際に家族を呼べるかは店の条件次第です。求人を出す前に、次の点を決めておくと面接で迷いません。

家族帯同を認めるか、単身赴任を前提にするか

制度上可能でも、住居や費用の面で単身を前提にする店もあります。どちらでもかまいませんが、求人票に明記してください。後から「家族は想定していなかった」と伝えると、内定辞退や早期離職の原因になります。

費用をどこまで負担するか

渡航費と住居の設計は住まいと渡航費の設計で詳しく扱っています。

家族が合流する時期

本人が先に赴任し、住居と生活が落ち着いてから家族を呼ぶ、という順番は珍しくありません。ただしオーストラリアのように、最初の申請に含めるかどうかで手続きが変わる国もあります。ビザの申請前に本人と合流時期を話し合ってください。

日本側の手続き

外務省の案内では、外国に住所または居所を定めて3か月以上滞在する日本人は、管轄の大使館・総領事館に在留届を出す義務があります(旅券法第16条)。家族も含めて届け出るよう、本人に伝えておくと親切です。

家族の扱いを含めた給与・待遇の全体像は海外勤務料理人の給与設計、国ごとのビザの比較はアジアの就労ビザまとめも参考にしてください。

本記事は一般的な情報であり、法律・移民に関する助言ではありません。記載内容は2026年9月22日時点で各国政府の公表情報から確認したものです。家族のビザと就労の可否は個別の事情で変わるため、申請前に各国の当局または専門家に確認してください。

出典

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