採用の進め方

海外出店の人材計画:開業12か月前からの逆算

日本から料理長を呼ぶ海外出店で、何を開業の何か月前に決めるか。ビザ手続きの期間を逆算したスケジュールの型と、現地採用・日本採用・立ち上げ応援の組み合わせ方をまとめました。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 人材計画は物件より先に始める
  2. 最初に決める3つのこと
  3. ビザにかかる期間を逆算する
  4. 開業12か月前からのスケジュール
  5. 現地採用と日本採用の組み合わせ方
  6. 立ち上げ応援をどう扱うか
  7. 開業後12か月の人材計画

海外出店の計画では、物件、内装、仕入れルート、許認可が先に動き、人の話は後回しになりがちです。ところが日本から料理人を呼ぶ場合、ビザの手続きだけで数か月かかる国もあり、開業日から逆算すると物件が決まる前に人材計画を始めないと間に合わないおそれがあります。

この記事では、海外出店の人材計画を「何を、開業の何か月前に決めるか」という順序で整理します。採用全体の流れは海外の和食店で日本人料理人を採用する方法にまとめています。

1. 人材計画は物件より先に始める

理由は3つあります。

2. 最初に決める3つのこと

① 日本から呼ぶ人数と役割

「日本人が何人必要か」ではなく「日本人でなければならない役割は何か」から考えます。

役割日本から呼ぶ必要性
カウンターに立つ職人、料理長高い。店の商品そのもの
仕込みの責任者、味の管理中。開業後にマニュアル化できれば現地に移せる
ホールの責任者業態による。日本式の接客が売りなら高い
一般の調理・ホールスタッフ低い。現地採用が基本

② ビザの経路

国と職種と給与で、使えるビザの経路が決まります。2026年9月時点で、英国のように新規の海外スポンサー採用が事実上閉じている国もあれば、シンガポールやオーストラリアのように給与の基準が高く設定されている国もあります。出店国が決まった時点で、自社の条件で経路が開いているかを確認してください。国別の状況は調理師・寿司職人の就労ビザ 国別まとめにあります。

③ 人件費の予算

日本から呼ぶ料理人の給与は、市場相場ではなくビザの給与基準で決まることが少なくありません。加えて、ビザ費用、レビー、渡航費、住居などの給与以外の費用がかかります。給与以外の費用の考え方は住居・渡航費の設計を参照してください。

3. ビザにかかる期間を逆算する

公的に確認できた、期間に関わる要件を国別に並べます。審査にかかる実際の期間は時期や案件で変わるため、各国の当局が公表する最新の処理期間を必ず確認してください。

期間に関わる公的な要件(2026年9月時点)
カナダ(LMIA高賃金枠)申請前の3か月以内に、少なくとも4週間の求人広告が必要。認められれば最長3年
カナダ(LMIA低賃金枠)失業率6%以上の都市圏では処理されない(2024年9月26日から)。期間は最長1年
米国(H-2B)就労開始の60日以上前に賃金決定(ETA-9141)を申請し、75〜90日前に労働認証を申請。一時的な需要(原則1年以内)が前提
マレーシア(Employment Pass)ESDが示す目安として、会社登録5営業日、MYFutureJobsでの求人掲載10営業日、所管官庁の支援レター3営業日(ファストトラック)/10営業日(通常)、EP申請2営業日(ファストトラック)/5営業日(通常)
英国(Skilled Worker)Chef(5434)は2025年7月22日以降、新規の海外採用が事実上できない

米国のE-2やO-1、オーストラリアのSkills in Demandビザ、シンガポールのEmployment Passなどは、今回の記事では審査期間の公的な目安を確認していません。経路ごとの詳細は、国別の就労ビザまとめからたどれる個別記事を参照してください。

日本側でかかる期間

4. 開業12か月前からのスケジュール

以下は、日本から料理長を1名、現地で調理・ホールを採用するケースの計画の型です。ビザの審査期間が長い国では前倒しし、短い国では後ろにずらしてください。

時期人材面でやること
開業12〜10か月前業態と必要な役割の確定。日本から呼ぶ人数の決定。ビザ経路と給与基準の確認。現地の専門家(移民弁護士など)の選定
9〜8か月前日本での料理長の募集開始。社内異動なら候補者の打診。現地法人の設立と、雇用主としての登録手続き
7〜6か月前料理長候補の面接と内定。労働市場テストが必要な国では現地での求人広告。ビザ書類の準備
6〜4か月前雇用主側の申請(スポンサー、LMIA、指名など)と個人のビザ申請。料理長候補の退職手続きの開始
4〜3か月前現地の管理職(副料理長、ホール責任者)の採用。料理長とのオンラインでの献立・仕入れの打ち合わせ
3〜2か月前ビザ取得、渡航準備、住居の手配。現地の一般スタッフの募集開始
2〜1か月前料理長の着任。現地スタッフの採用確定と研修開始。試作とメニューの確定
1か月前〜開業プレオープン、オペレーションの調整

ポイントは、料理長の着任を開業の1〜2か月前に置くことです。着任が開業直前になると、現地スタッフの研修と試作の時間がなくなり、料理長本人も生活の立ち上げと開業準備を同時に抱えることになります。

5. 現地採用と日本採用の組み合わせ方

まず現地の日本人を探す

現地にすでに就労資格を持つ日本人がいれば、ビザの問題はありません。外務省の調査では、2025年10月1日時点の海外在留邦人は129万8,170人で、そのうち永住者は58万8,486人です。都市別ではロサンゼルス都市圏63,972人、バンコク51,297人、ニューヨーク都市圏38,251人、シンガポール33,397人、上海31,733人が上位です。出店する都市にどれだけの日本人がいるかは、現地採用の可能性を測る最初の手がかりになります。都市別の詳しいデータは海外在留邦人の都市別データにまとめました。

日本からの採用は「役割の核」に絞る

日本国内の料理人は、有効求人倍率で見ると売り手市場にいます。厚生労働省によれば、飲食物調理従事者の有効求人倍率は2026年7月時点で2.18倍(全職業1.05倍)です。2023年の2.90倍からは下がっていますが、日本国内にも選択肢がある人を海外に呼ぶことに変わりはありません。日本からの採用は、先に挙げた「日本人でなければならない役割」に絞るのが、費用と時間の両面で合理的です。

現地の競合状況も見る

農林水産省の調査では、海外の日本食レストランは2025年に約18万1,000店で、2023年の約18万7,000店から初めて減少しました。ただし国によって動きは違い、インドネシア(+2,580店)、ブラジル(+1,670店)、韓国(+1,590店)などは増えています。和食店が急増している国では、和食の経験がある現地スタッフの取り合いになりやすいと考えて、採用の開始を早めてください。

組み合わせの型

日本から現地の日本人現地採用向いている業態
職人中心型料理長+職人1〜2名ホール責任者補助スタッフカウンター寿司、割烹
料理長集中型料理長1名副料理長またはホール責任者調理・ホールの大半居酒屋、専門店
仕組み移転型立ち上げ要員(期間限定)店長ほぼ全員ラーメン、多店舗展開の業態

6. 立ち上げ応援をどう扱うか

日本の本部から、開業前後の数週間だけ料理長やトレーナーを出張させるケースは多いと思います。ここで注意が必要なのは、短期の商用目的の入国で、厨房に立って調理や接客をすることが認められるかどうかは国によって違うという点です。研修の指導や打ち合わせは認められても、営業中の厨房で働くことは就労とみなされる国もあります。出張者のビザの扱いは、現地の専門家に事前に確認してください。

7. 開業後12か月の人材計画

日本に店舗がある企業なら、日本の食文化海外普及人材育成事業で日本国内で外国人調理師を育て、帰国後に母国の店に迎えるという、ビザに頼らない中長期の人材計画も考えられます。

本記事は一般的な情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。ビザの要件と審査期間は国や時期によって変わります。スケジュールは計画の型を示したもので、実際の所要期間は下記の一次情報と現地の専門家にご確認ください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。